手が汚れる靴磨きから抜け出そう
シューケアマイスター部二子玉川店の寺田です。
革靴の磨き方をお客様にお伝えしていると、「え?それって本当ですか?」と驚かれるフレーズがいくつかあります。
「靴磨きで手が汚れることは、実はそれほどないんです」
これは、そのフレーズの一つです。
ただし、このためにはブラシをうまく使っていただく必要があります。
今回は、ブラシを活用した手を汚さない靴磨きについてお話します。
手が汚れるから靴磨きは面倒くさい
2年前、私が担当していた靴磨きのワークショップで、お客様から声をかけていただいたことがあります。
「靴を磨いたのに、全然手が汚れていなくてビックリしました。今までは手を真っ黒にしながら磨いていたので…」
そのお客様にとっての靴磨きは、手を汚しながらの面倒な仕事だったそうです。
「手を汚さずに靴を磨ける」と、お客様に新たな発見をしていただけたこと。
この体験が、お客様と靴磨きの距離を縮めてくれたこと。
そのときの嬉しさは、今でも覚えています。
同時に「手が汚れるから靴磨きは面倒くさい。そう思っている方は、もっとたくさんいるはずだ」と、私も認識を改めることができました。
靴磨きが、手を汚す面倒な仕事から、手を汚さず手軽にできる仕事になる。
靴磨きの捉え方を変える後押しをしたい。
この出来事をきっかけに考えるようになったことです。
クリームを塗る、広げるときには必ずブラシを
手を汚さずに靴を磨くには、ブラシの使い方がポイントです。
ブラシは靴磨きで頻繁に使います。
また、それぞれの工程ではブラシを使い分けます。
手を汚さずに靴を磨くためのポイントは、ブラシを使う【1】〜【3】の工程で二つあります。
【1】ホコリを落とす
靴磨きの一番最初の工程です。
ホコリ落としには馬毛のブラシを使います。
馬毛ブラシは、毛の密度が詰まっていて柔らかさがあるため、細かな部分に入り込んでホコリを掻き出すことができるのです。
【2】クリームを塗る
手を汚さずに靴を磨くための、一つ目のポイントです。
クリームは布で塗ることもできますが、指に巻いた布に染み込んだクリームが手を汚してしまう可能性があります。
そこで、専用のアイテムを使います。
ペネトレィトブラシ ¥440(税込)
ペネトレィトブラシはクリームを塗るための専用ブラシです。
毛先にクリームを取って、革靴に塗れば手を汚してしまうことはありません。
またペネトレィトブラシでクリームを塗れば、クリームを効率良く使うことができます。
実は布でクリームを塗ると、布がクリームを吸収してしまい、ブラシと比較して多めにクリームを使う必要があります。
【3】クリームを伸ばしてツヤを出す
手を汚さずに靴を磨くための、二つ目のポイントです。
【2】の工程で塗ったクリームを、靴全体に伸ばしてツヤを出します。
この作業自体は布でも可能です。しかし、手を汚さないためにも布は使いません。
使用するのは、化繊か豚毛のブラシです。
靴全体を一気にブラッシングします。
化繊や豚毛のブラシは毛にコシがあるため、クリームを効率よく馴染ませることができます。
ブラシを使えば、布でツヤを出すよりも短時間で作業が終わります。しかもムラなく、綺麗に仕上げることが可能です。
手を汚さないポイントは、靴クリームを使うタイミングでブラシを活用することです。
ブラシを使えば、必然的にクリームと手の距離を離すことができます。
この距離が、手にクリームが付着するリスクを低くしてくれるのです。
靴磨きは手を汚さずに、軽快に
布での靴磨きから、ブラシを活用した靴磨きへ。
この切り替えができれば、靴磨きは手を汚さない手軽な仕事になります。
手が汚れるのを覚悟して、気合を入れて革靴をピカピカに…
手が汚れることもないし、ツヤが落ちた革靴をサッと磨いてみようかな…
覚悟や気合いも良いのですが、やはり私は靴磨きの軽快さを多くの人に伝えていきたいです。