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Meister interview vol.13 前編 〜 studio.CBR 中川崇司さん 〜

革靴、皮革製品や靴磨きなど、足元のお仕事に携わっている方はもちろん、
ファッションや皮革に精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY シューケアマイスターがインタビューし、ご紹介する企画です。

我々マイスターがお客様よりお預かりしている革靴も、
時代が進むにつれ、手に入れる手段が多様化していることを感じます。

現在は製造されていないモデルや、国内では手に入れるのが難しい一足を、
様々なお店やサイトのお陰で手に入れやすくなりました。

革靴が適切な手入れを続けることで長く履くことのできる道具だからこそ、
世代や人々の間を渡っていくこととの相性が良いのだと思います。

今回は、そんな革靴を専門に、
国内外問わず様々な高級靴の買取・販売を行っているという、
代官山のお店、studio.CBRの中川崇司さんにお話を伺いました。


Q(マイスター 以下:マ). 中川さんがお店を開くこととなった経緯を教えて下さい。

中川さん

元々、百貨店のインショップでセールススタッフをしていました。
わりかし楽しく仕事はしていましたが、
ブランドで働く以上自分の好きな物ばかりを販売するという事はできないわけで。

せっかくアパレル業をやるのなら、
もっと自分の好きなようにやればいいのではないかと、
思い切って仕事を辞め、
海外に行っては自分が気に入ったものを仕入れて日本で販売をする、
そんなことをしばらくやっていました。

マイスター

もともとはアパレルでお仕事を、
独立後は海外で買い付けを、それぞれされていたんですね。

中川さん

そうですね。
そのうち 、 段々とお得意様が増えてきたのでお店を出しました。
ありがたいことに 、 当初想定していたよりもたくさんの方に来て頂けて。

ただ、気付けばお店での接客や買い取りの仕事が忙しくなってしまい、
海外買付に行く余裕はなくなってしまいました。

自分の扱いたいものを扱うという軸だけは持ち続けていますが、
後は流れに身を任せているような感覚で、形態は少しずつ変化していっています。

マイスター

個人的に、中川さん言う「扱いたい物を扱う」というこだわりは、
studio.CBRさんのInstagramやオンラインショップの中にある、
統一感を持って丁寧に撮影された靴の写し方や、店内の雰囲気にもにじみ出ているように感じます。

独立後のこのお仕事には、
どんなところに魅力を感じていますか?

中川さん

やはり、お店での接客に一番やりがいを感じています。

革靴は、
“ここが自分の人生のターニングポイント”
そんな場面では絶対に必要なものになります。

例えば、自分の結婚式。
そういう場で使うための靴を、
百貨店でもなく、大手のセレクトショップでもなく、
うちのお店で選んでくれる方がいる。

何より、誰かの人生の大切な場面に、うちのお店が関わることができる。
オーナーとして、そして一(いち)販売者として、
これ以上に嬉しいことはないと思っています。

マイスター

またとない貴重な機会に携わることができるのは、
かけがえのないものがありますよね。

我々の店舗にも「記念の席があるので」と、
磨きの依頼でお持ち込みいただくことがありますが、
そういったお客様や作業に携わることができるときは、
とても大きなやりがいや喜びを感じます。

買い取りや販売など、接客の様々なお仕事の中で、
中川さんは日頃どんなことを心がけていますか?

中川さん

「お客様の事を知ろうとしていないのに、こちらの提案なんて聞いてもらえるわけがない。」

百貨店で働いていた時代に、上司に言われた言葉です。

どれだけ洋服の知識だの、ファッションセンスだのを持っていても、
お客様の方を向いていない販売員は世の中において必要とされていません。

うちのお店は誰かに必要とされる接客を出来ているか、
そのことは常に考えています。

studio.CBRの店内風景。

木を基調とし、自然光に溢れ、落ち着きと温かみある店内。
ゆっくり、じっくりと大切な一足を選びやすいように、環境が整えられている。

什器や陳列方法は、
英国靴の産地 ノーザンプトンにあるメーカーの直売店をイメージしているとのこと。

Q(マ). 独立当初は海外での買い付けもされていたとのことですが、どこに行くことが多かったのでしょうか?

中川さん

よく買い付けに行っていたのは、イギリスです。

マイスター

革靴といえば、という感じでしょうか。
やはり革靴に関する国では外すことのできない場所のひとつですよね。

個人的には海外というと、
アクシデントをはじめ、さまざまな出来事が起こるイメージがあります。
そういった、出先での印象深い経験はありますか?

中川さん

結構いろいろな失敗は経験しているのですが、
特に思い出に残っているのはイギリスの山奥で道に迷ったときの出来事です。

まず、あの時の買い付けは、日本の自宅に国際運転免許を忘れていくという大失態を犯しました。
どうしようもなかったので、本来車で行くはずだった場所に、
大荷物を持って電車で行ったのですが、そこはwi-fiも入らないような山奥でして。

本当に物音ひとつしない山道で、完全に道に迷ってしまいました。
それもそのはずで、僕が事前にgoogleマップで調べていた住所が全然違う場所だったのです。

マイスター

立て続けにトラブルが起こるものですね…。

どのようにして窮地を脱したのでしょうか?

中川さん

小一時間、どうしようどうしようと彷徨っていると、
奇跡的に、たまたまその山道を通った日産の車に乗る親日家のおばちゃんが助けてくれまして。

なんとか目的地にたどり着くことができました。

マイスター

慣れ親しんでいない土地でも助けてくださる親切な方との、素敵なご縁ですね。
その方が日産の車に乗っていたというのも、不思議なめぐり合わせを感じます。

中川さん

ちなみに、本当の目的地の前に、
僕が事前に調べていた住所に連れて行ってもらったのですが、
そこは山を抜けた場所で、なだらかな草原の中にポツンと小屋が一つ建っていました。

周りには羊がいっぱいいて、なんとも美しい場所でしたね。
あの素敵な風景は一生忘れません(笑)

マイスター

旅先でのそういった風景って、忘れられない印象に残りますよね。

まるで本の挿絵に出てきそうな、
機会があれば目にしたくなる、幻想的な場所ですね。


前編のインタビュー内容はここまでとなります。

5/3(月) 更新予定の後編では、
数々の靴を目にしてきた中川さんのお手入れへのこだわり、
お気に入りのケアアイテムや失敗談などのお話をご紹介いたします。
ぜひご覧ください。

次回のインタビューもお楽しみに。

studio.CBR

〒150-0034東京都渋谷区代官山町3-7-2F
平日 13:00~18:00|土日祝 11:00~18:00(不定休)
※来店は予約制となっておりますので、詳細はHPをご確認ください。

TEL:03-6379-4850

・HP:https://studiocbr.net/
・Instagram:@studio.CBR


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