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Meister interview vol.8 〜 Trading Post 青山本店 田中茂雄さん 〜

革靴、皮革製品や靴磨きなど、足元のお仕事に携わっている方はもちろん、
ファッションや皮革に精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY シューケアマイスターがインタビューし、ご紹介する企画です。

” 行きつけのお店 “というのがあると、毎日がすこしだけ豊かになるような気がします。
床屋、定食屋、バーなど、慣れ親しんだお店に通い詰めるというのは、独特の喜びや発見があります。

さて、我々が日々お預かりしている革靴も長く履くために、
「慣れ親しみ、信頼の持てるお店で購入したい」
と感じる方は多いのではないでしょうか。

今回は数々の革靴ファンに信頼され、人気を博しているTrading Post 青山本店にて、
様々な革靴を目にし、お客様と接しているという田中茂雄さんにお話を伺いました。


Q(マイスター 以下:マ). 田中さんの現在のお仕事の内容を教えてください。

田中さん

トレーディングポスト各店舗のサポートに加え、青山本店の業務全般を行っています。

マイスター

青山店以外だけでなく、様々な店舗を見ているんですね。

現在のお仕事に就くまでには、どのような過程や経緯があったのでしょうか?

田中さん

前職で洋服を取り扱っていたのですが、
その際に「足元が全体の雰囲気を左右する」事を痛感しました。
このこともあり、革靴をもっと本格的に扱いたいと思い弊社に入社しました。

マイスター

革靴だけでなく、洋服に携わるお仕事もされていたんですね。

これだけ魅力的なラインナップの中でお仕事をしていると、
日々、革靴が欲しくなるような誘惑がたくさんあると思います。

田中さんご自身は現在何足ほどの靴をお持ちですか?

田中さん

70~80足ほど持っています。

マイスター

ものすごい数をお持ちですね。
持っている靴を把握するだけでもかなり大変そうです。

中でも特にお気に入りのブランドなどあるのでしょうか?

田中さん

Tricker’s(トリッカーズ)、Carmina(カルミーナ)、GAZIANO & GIRLING(ガジアーノ&ガーリング)
が好きで、特にTricker’sの靴は多く持っていますね。

マイスター

Tricker’sは上品さもありながら、
ガシガシと履けるようなタフさを兼ね備えていることから、
工房にも磨き、修理問わずたくさんのお持ち込みがある信頼されているブランドのひとつですね。

お持ちのTricker’sの中だと、やはりカントリーブーツが多いですか?

田中さん

はい。カントリーが多いですが、ドレスも結構持っています。
3、4割はドレスがトリッカーズのドレスラインですね。

マイスター

トリッカーズのドレスラインはあまり履いている人はいらっしゃらないですよね。

実は僕も以前試着したことがあるのですが、
足にあわず、あきらめてしまった覚えがあります(笑)

田中さん

木型によってはありえますね。

残念ながら現在取り扱いはないのですが、
以前弊社で別注をしたモデルは木型から別注をかけていたこともあり、
日本人の足との相性が更に良い仕様になっていました。

マイスター

木型からの別注というのは
革靴をすでに何足も持っている方にはもちろん、
「足に合う一足を探している」
という革靴初心者の方にとってもたまらない仕様ですね。

個人的にもかなり気になる企画なので、
いつの日か企画が再び上がった際はぜひ試してみたいです。

話題に上がった通り、お持ちの靴が70~80足というと
Tricker’sだけでもかなりの数だと思いますが、
その中でも、特にお気に入り、思い入れのある一足はありますか?

田中さん

20年以上前に初めてパターンオーダーをしたブローグシューズですね。

ホワイトのスムースレザーという
当時では珍しい仕様のオーダーをしたこともあり、
個人的に思い入れのある一足です。

今でこそトリッカーズでも
ホワイトのアッパー(甲革)を使用するようになりましたが、
当時はトリッカーズの職人さんに
「ホワイトのカントリーなんてありえない!」
と冗談交じりに言われた思い出もあります。

 

田中さんが20年以上前にオーダーをしたという、Tricker’sのブローグシューズ

マイスター

シーシェイド、エイコンアンティークなどのカラーのイメージが強いTricker’sですが、
ホワイトレザーのアッパーにすると上品もあり、
かつ遊び心や軽やかさも感じさせる、バランスの良い一足に仕上がるんですね。

また、20年以上前にオーダーしたホワイトレザー の靴を、
これだけ綺麗な状態で保つことができているというのも素敵です。

Tricker’sの頑強さが起因する点もあると思いますが、
同時に田中さんの日々のお手入れによる賜物でもあると感じます。

普段はどんなお手入れをしていますか?

田中さん

普段はアッパー、コバ含め、
M.MOWBRAY プレステージのクリームエッセンシャルによるお手入れがメインです。

コバがナチュラルカラーなので、
あえてニュートラル(=無色)のクリームエッセンシャルを使用、
栄養補給だけにとどめることで、自然なエイジングを楽しんでいます。

黒ずみや、ひび割れがあるときのみ
M.MOWBRAY シュークリームジャーのホワイトを使用して補色をします。

マイスター

コバまでエイジングが楽しめるというのは、とても魅力的ですね。
ぶつけたり、擦れたりすることの多い部分だからこその経年変化がとても楽しめそうです。

田中さんなりに、持っている靴を履き続け、
そのためのケアを習慣とするために意識していることはありますか?

田中さん

こだわりは特にありませんが、
習慣としてずっと使っている物でも、なるべく新たな発見をするように心がけています。
しばらく使っていなくても、その発見がきっかけで再び使い始めるケースもあります。

それゆえ、断捨離は苦手です…(笑)

お手入れに対してもこだわりはありませんが、
自分が出来る範囲で定期的にメンテナンスすることが億劫にならないコツかと思いますね。

マイスター

確かに、「大変」「難しい」というイメージがついてしまうと
お手入れって続きづらいですよね。

我々も「革靴をはじめて購入した」「これから靴磨きを始める」というお客様には、
シューツリーや靴べら、ホコリ落としのブラッシングなど、
習慣になり、続きやすいような簡単なお手入れからおすすめしています。

他にも、何か気に入ってくださっている、
普段使用してくださっているアイテムはありますか?

田中さん

SANOHATA BRUSH、紗乃織靴紐は個人的に好きで使用しています。

ブラシに関しては、ぱっと見ただけでは伝わらない部分ですが、
長く使っていても全くへたらない強さが気に入っています。

また、持ち手が湾曲しているため非常に持ちやすく、
当店に修理お預けいただいたお客様の靴の仕上げをする際に、
何足磨いても疲れることがないですし、単純にツヤも出しやすいですね。

少し重みがあるブラシには「お手入れをした!」という充実感がありますが、
一日に何足も磨く人や、実用性重視の方にはおすすめです。

マイスター

SANOHATA BRUSHの軽さは、我々も日々の作業の中で実感しています。
細かく、伝わりづらい部分ではありますが、
日々使い続けるとじわじわと魅力を感じていただけるアイテムだと思います。

お仕事の内容も相まって、たくさんの靴を目にしてきたと思うのですが、
現在取り扱っている靴の中で、田中さんの一押しの一足はありますか?

田中さん

EDWARD GREENのアンライニングローファーです。
アンライニング(※1)でこのような立体的な成形が出来る技術と、素材感が良いと思います。

EDWARD GREEN アンライニングローファー

マイスター

EDWARD GREENにもこんなモデルがあるんですね。

グリーンらしい確かな技術で、
英国靴らしくかっちりと見えるように仕上げられていますが、
アンライニングならではの、柔らかな靴の佇まいも感じ取ることができます。

凄く派手なわけではないですが、
軽やかな白のステッチ、履き口まわりの素材の切り返しや、
先ほども話題に上がった、エイジングも楽しめるナチュラルカラーのコバなど、
随所に遊び心や細かな楽しさが詰まっている、魅力的な一足ですね。

田中さん

某有名靴メーカーさんが当店にいらっしゃった際も褒められました。

エドワードグリーンはイギリス靴らしくかっちりしているイメージがあると思います。
個人的な感想ですが、エドワードグリーンは意外にイタリアでも人気があるのですが、
その影響もあるかもしれませんね。

3色展開で、ネイビー以外だと
モール(ベージュ)、ミンク(ダークブラウン)など、
ちょっと変わった色名がついているんです。

マイスター

どの色も、アンライニングの履き心地と合わせて
これからの時期に毎日でも履きたくなってしまう色展開ですね。
とても悩ましいです(笑)

最後に、以前はお洋服に関するお仕事もされていたとのことですが、
現在取り扱いのある革靴も含め、足元やファッションでのこだわりはありますか?

田中さん

元々音楽(ブリティッシュロック全般)から影響を受けているので、
トラッドベースでちょっと変わった靴やファッションアイテムが全般的に好きです。

マイスター

ルーツにはロックの存在があったんですね。

先ほど見せていただいたホワイトレザー のTricker’sもそうですが、
長く親しまれ、育まれてきた伝統という下地に
加えた遊び心や変わったポイントというスタイルは、
個人的にもツボを刺激される、素敵なものだと感じます。

貴重なオーダーや、楽しい靴のお話、
今回はお忙しい中ありがとうございました。

※1 アンライニング:
通常、革靴の裏側に使用される補強用の革を用いずに靴を作成する手法、またその仕様を指す。
革を一枚除いて作ることにより、足当たりが柔らかくなりやすい。


インタビュー内容は以上です。
田中さん、お忙しい中ご協力ありがとうございました。

上記に挙げた靴以外にも、
さまざまなインポートシューズが取り揃えられているTrading Postさん。
既成のものだけでなく、ここにしかない別注のモデルも豊富に用意されているところも
靴好きには堪らないポイントだと思います。

今回のインタビューで靴が欲しくなってしまったという方は、
ぜひ一度足を運んでみてください。

次回もお楽しみに。

トレーディングポスト青山本店

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