Meister interview vol.4 〜 鈴木理也さん 〜
2021年02月15日
革靴、皮革製品や靴磨きなど、足元のお仕事に携わっている方はもちろん、
ファッションや皮革に精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY シューケアマイスターがインタビューし、ご紹介する企画です。
今回は、ブーツ好きには堪らないこちらの方。
レッド・ウィング・ジャパン(株)の元代表取締役であり、
現在はブーツブランド Ol’ Shanks(オルシャンクス)の監修を務める、鈴木理也さんにお話を伺いました。
Q(マイスター 以下:マ). 現在の職業に就いた経緯、その内容について教えてください。
鈴木さん
レッド・ウィング・ジャパン(株)の代表取締役を一昨年に退いてフリーランスで活動を始めて2年近くになります。
レッドウィングジャパンで約14年間、日本のブーツ市場を見てきましたが、
その間に多くのつくり手がこだわり度合いの高いブーツを世に出し、日本はブーツ好きにとっては世界で最も素晴らしい市場になりました。
ブーツ以外の革靴においても、従来の欧米追従型を脱して日本らしさを持つ靴が評価される土壌が生まれつつあります。
そうした中で、海外ブランドを日本で販売するよりも、
日本のつくり手の側に立ちたいと思うようになり、独立することにしました。
現在では、奈良の靴組合のお手伝いをしながら、
少量を受注生産する自分のブランドのブーツの販売や、
Youtube「ブーツのミカタ」チャンネルでの発信などをしています。
マイスター
ありがとうございます。
現在は日本のモノづくりを中心に活動されているんですね。
約14年間、日本のブーツ市場を見てきた鈴木さんの視点から、
日本人が作るブーツやブーツ以外の革靴を見たときに、
どのような点(ディティールやブランド背景など)に対して日本らしさを感じることがありますか?
鈴木さん
日本のメンズカジュアルファッション市場は、
クラシックなものやビンテージに精通し、それらから大きな影響を受けています。
日本のブーツのつくり手も同様です。
現代的な量産体制が確立する中で工程が簡略化される前の、
古い時代のつくり方やディテールを受け継いでいるものも多く見られます。
レッド・ウィングのような生産効率を高めた量産タイプのブランドがもうやらなくなった、
時間をかけて手作業で行う工程もかなり残されています。
小規模なつくり手が多く、分業も発達しているので、
それをやり易い背景があるんですね。
素材も多様です。
少量生産のものが多いので量産に向かない革も使えますし、
手作業が多いので扱いにくい革も使えます。
ブーツには、ホースバット、タンニンなめし革、なども多く使われています。
長年ブーツを愛用しているユーザーも多く、
こだわった製品へのニーズも高いので、
こうした製品もどんどん増えてきて、
ことブーツに関しては、他のどの国よりも幅広い、奥の深い、市場になっていると思います。
マイスター
確かに、靴磨きに使用するブラシや着ている洋服など、
我々の身の回りの生活には靴以外にも様々な日本の職人さんに作られた道具が沢山ありますね。
小規模なつくり手が多く、手作業を多用して製造をするのに向いているという日本の状況も合点が行きます。
Q(マ). お仕事の一番のやり甲斐、魅力について教えてください。
鈴木さん
日本の革靴やブーツのつくり手と共に、
海外を模倣するのではなく日本ならでは発想でものづくりをする機会や、
自分自身のこだわりを込めた製品を販売する機会に恵まれています。
マス市場ではなく、独自の感性を持ってこだわり度合いの高いものづくりや提案をする人々とも交流でき、刺激を受けています。
Q(マ). 現在のお仕事をやるにあたり、ターニングポイントのようなものがあれば教えてください。
鈴木さん
いくつかの業種ではありましたが、常に欧米の企業で働き、
それらの国の文化的な背景からつくられた長い歴史を持つブランドやプロダクトのマーケティングや販売をしてきました。
欧米の関係者が日本に来て日本の市場を案内することもよくありましたが、
レッド・ウィング時代に多くの海外の顧客がバイイングのために日本に来て、
日本のブランドや製品を目の色を変えて探すのを見て、次第に日本から海外への発信したくなりました。
マイスター
日本製のクオリティは、当時から世界中の注目を集めていたんですね。
Q(マ). 好きな靴や革小物のブランド、思い入れのある一足などがあれば、教えてください。
鈴木さん
自分が企画に携わった製品の中から敢えて挙げるとすると、
「ベックマン・フラットボックス」でしょうか。
人知れず存在していた先芯(※1)のない革靴が、認知・理解されるのに大きな役割を果たしていると思うので。
個人的に好きなブランドは「CLINCH (クリンチ)」です。
クラシックな雰囲気、タイトなラスト、など、履いていて大きな満足感を感じます。
鈴木理也さんご自身で履き込んでいるという3足。