Meister interview vol.17 〜 万双 北山雅人さん × RENDO 吉見鉄平さん〜
2021年07月05日
革靴、皮革製品や靴磨き、ファッションなどに精通している
プロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAYのシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介していく企画です。
今回はコラボ企画限定のアイテムをリリースし、また、20年来の友人でもあるという、
鞄・革小物ブランド「万双(まんそう)」の北山雅人さん(画像左)と、
靴ブランド「RENDO(レンド)」の吉見鉄平さん(画像右)、お2人にお話を伺いました。
万双 北山雅人さん
革靴の販売員として多くの紳士靴ブランドを渡り歩きながら
国内外問わずさまざまな革靴、皮革素材を目にした経験を活かし、
現在も根強い人気を誇る国産革靴ブランドの立ち上げにも携わる。
そんな中、転職先の婦人鞄のブランドでハンドバッグを取り扱い、鞄の魅力に目覚める。
鞄・革小物のブランド「万双」に移った後、上野の実店舗での接客にくわえ、
数々の紳士靴、鞄ブランドで培った皮革に対するノウハウを活かし、企画、生産管理などを担当。
ブランド創業から25年以上経った現在も、多くの革製品ファンから根強い人気を誇る、
「世界最高峰の品質を常識的な価格で提供する」という「万双」のスタイルを支える。
RENDO 吉見鉄平さん
大学在学中に留学先のイギリス、ロンドンの靴学校で靴作りの基礎を学び、
帰国後に浅草の靴学校にてその知識をさらに深める。
卒業後は浅草の紳士靴メーカーにて、
デザインを元に型紙を起こし、革を裁断するパタンナーとして活動。
国内外問わずさまざまなブランドの靴作りを手掛ける。
2013年、自身の靴ブランド「RENDO」の創立と同時に、浅草にアトリエ兼ショップを立ち上げ。
靴職人として木型の設計、デザインや皮革の裁断を行うだけでなく、
お客様の履き心地を重要視し、自身がフィッティングを担当。
お客様と靴の関係への姿勢、生み出された靴のコストパフォーマンス、
そしてその人となりが、全国の革靴ファンから支持を集める。
|コラボ企画「【連動-RENDO-企画】」を行うことになった経緯
北山さん
鉄ちゃん(=吉見さん)が運営している「RENDO」、僕が居る「万双」では、
「2つのブランドを両方持っている」「どちらにも魅力を感じている」
というお客様が多く居てくださってます。
で、そんなことに加えて、僕と鉄ちゃんが20年来の付き合いだってこともあって、
「一緒に商品に取り組めたらいいね」なんて話は前々からずっとしてたんです。
なんですけど、「ただ友達だからコラボしました」というのはやりたくないなぁとも思ってて。
|長い構想の中で、コラボが始動したきっかけ
北山さん
あるとき荒川区にある、爬虫類の皮革を取り扱うメーカーさんとの打ち合わせで、
「面白い素材があるんです」とヌバック状態のリザード素材を出してもらったことですね。
見た瞬間引き込まれましたし、とても魅力を感じました。
そんな中で、靴屋として働いてたときの経験もあって
「この革は靴に使っても良いな」と、思いついたんです。
「この革を、靴作りに携わってる誰かに伝えたい」と考えてるときに
ふと思い浮かんだのが鉄ちゃんと「RENDO」の存在でした。
メーカーさんとの打ち合わせ終わり、
その足で浅草の「RENDO」に向かい、鉄ちゃんに革の魅力を伝えにいきました。
|吉見さんは皮革を見てどう思いましたか?
吉見さん
実は、北山さんからの連絡を受ける前、時をほぼほぼ同じくして、
僕も別の業者さんから同じ皮革を手に入れてたんです(笑)
北山さん
手に入れた革について話しをしてたら、鉄ちゃんに「ちょっと待って」って言われて。
見覚えのある同じ革を後ろ(=アトリエ)から持ってきたんですよね(笑)
同じタイミング、別々の場所で、
同じ素材に魅力を感じたということが分かったとき、
「これだ」って思いました。
そして「ヌバックリザード」を軸に置いたコラボである、
「 【連動-RENDO-企画】 」を始動させました。
|企画の目玉、「ヌバックリザード」の魅力
北山さん
一番はなんと言ってもこの質感なのかなぁと。
リザードの凹凸感が持つ独特な雰囲気と、
バフィング(※)されている分のマットで、上品な仕上がり。
高級感がありながら、カジュアルにもマッチする雰囲気をまとっているというか。
※バフィング:つるっとした皮革の表面をうすく削り、起毛した状態にする工程。
吉見さん
製造にも手間がかかってて。
染色をし、バフィングをし、通常ならそこで仕上げるんですけど、
今回の「ヌバックリザード」は、その後さらに二度目の染色がされてます。
当然二度の染めは時間も労力も必要なんですけど、それに見合うだけの発色の良さがありますね。
北山さん
高級感がありながら、適度に遊びのある革なんですよね。
月なみな言い方ですけど、大人なカジュアルと言いますか。
吉見さん
うちはパターンオーダーをやっているんですけど、
最近リピートしてくださるお客様から
「普通の素材は持っているので、珍しい素材で靴を作りたい」
というご要望を頂くことが増えてきてまして。
「クロコダイル」を採用する線も浮かびましたが、
希少素材ゆえの値段から、お客様目線でオーダーのハードルが上がってしまったり、
素材の特性上、靴の雰囲気がどこかギラついちゃうんじゃないかなぁと思ったりで、すこし避けてたんです。
そんな中で見つけた「ヌバックリザード」は、
感じていたこれらの課題を解決してくれる素材でもありました。
|「ヌバックリザード」は実際にどんなアイテムに仕上がったのでしょうか。
吉見さん
「RENDO」からはタッセルローファーをリリースします。
継ぎ目をすくなくして、素材の表情を存分に活かせるようなデザインで作りたくなったんです。
既成ラインナップの中でも、継ぎ目の少ないこのモデルに軍配が上がりました。
靴紐の通ってないローファーやスリッポンは、
紳士靴の中だと比較的カジュアルな位置づけです。
今回の「ヌバックリザード」はマットな質感が
適度に全体を引き締めてくれるので、うまくバランスがとれてるのかなと。
北山さん
「万双」ではミニ財布を作りました。
目を引く凹凸感、高級感や上品さを兼ね備えたこの素材を、
どう使おうかと考えているときに、昨今の「カジュアル化」が浮かんだんですよね。
服装の流行や、キャッシュレス化の波に合わせるように、
お財布の見た目もすこしずつ変わってきています。
軽装感のある「ミニ財布」と、
落ち着いた雰囲気をまとった「ヌバックリザード」。
この2つは相性が良いだろうということで、今の形になりました。
|靴を作る中で苦労した、こだわった部分
吉見さん
作業をする上で難しかったということはそんなになかったですかねぇ…。
どちらかというと、材料の確保で苦労が多かったです。
動物、生き物の革である以上、小さな個体のものもあるわけです。
靴において、まして今回のような継ぎ目を作らないデザインでは、
採用できなかった皮革の個体もすくなからずありました。
派手なデザインにしたり、もうすこし効率の良い裁断の方法も考えましたが、
今回は継ぎ目や縫い目をなるべくすくなくし、
素材のポテンシャルを活かすことを優先しました。
|財布を仕立てる上で苦労した、こだわった部分
北山さん
コレに限らずですが、うちの革小物はハギ(=継ぎ接ぎ)を作りません。
お財布だったら触れる側に来る、背表紙一枚をドンと大きく、贅沢に革を使うようにこだわっています。
鉄ちゃんのところと同じで、正直一枚の動物の革からの取り都合を考えると
ハギを作らないこのやり方は効率が悪くなり、そういう意味での苦労はうちもあります。
実際、ミニ財布のこのデザインだと、一匹分の革からはお財布が二つくらいしか作れません。
ですが、継ぎ目がないように作るからこそ、
折り曲がりの部分なんかは立体感やカーブの美しさが際立ちます。
|企画を実現してみて思うこと
吉見さん
今は、うち(=RENDO)も北山さんのところも、
こだわって商品を作る中で余ってしまった、あるいは余ってしまう革のことがあるんですよね。
北山さん
そんなこともあって、現在は余った革で靴べらを作ろうと企画中です。
吉見さん
こういう部分も含めて、コラボをしてよかったなぁと。
うちだけだったら、「じゃあ靴べらやりましょう」なんてところまでは、
なかなかたどり着かなかったと思うので。
とにかく、「こんなにいい素材を無駄にしたくない」ってところがあります。
|最後に、お互いのブランドについて
北山さん
2013年に鉄ちゃんがお店をやるって言い出したとき、
「ついに勝負に出たか」って思ったのを今でも覚えてます。
あれから7年以上経った今、
うちにお越しになる方々の中でももRENDOさんのファンってすごく多くて。
コストパフォーマンス、フィッティングの評価がどのお客様からも高いんです。
木型を設計して、パターンも自分で起こして、靴作りのこれらを知った上で、
鉄ちゃん自身が接客で丁寧に足を見てる部分が強いですよね。
あとは、鉄ちゃんのキャラクターかな。
みんな「吉見さん吉見さん」って言いながらうち(=万双)に来ますね。
皆さんホント嬉しそうに鉄ちゃんのことを語ってくれるんです。
RENDOさんの魅力っていうのはどれか一つが欠けてても、ダメなんだろうなと思います。
吉見さん
正直な話、デザインだけ工場に送って「鞄や革小物を作ってくれ」と依頼することも、
もっと高い値段で商売することもできると思うんです。
けど、北山さんがお店でお客様と直に話して、要望を汲み取って、
今回の素材を見つけたときのように革を見に行ったり、
東京から神戸の職人さんに直接会いに行って要望を伝えたり。
鞄に使う金具を、わざわざ新たに削り出したりもしてるそうで。
こだわりを突き詰めながら、お客様の需要を叶えるための製造体制を築いて、
価格も可能な限り抑えてるっていうのは、ブランドの大きな特徴というか。
こだわりも、価格も、全部真似しようとしても真似できないです。
20年前に僕らが出会ったときと職種は変われど、
「靴が好きで、鞄が好きで、革が好きで、物を作るのが好き」という
北山さんのスタンスは変わってないですし、
万双さんは僕たち職人が良いなぁと思う、そんなモノづくりをずっと続けてるブランドだと思います。
お客様に喜んでいただきたい。
すこしでもクオリティの高いものを提供していきたい。
そんな思いでモノづくりに取り組む2ブランド。
北山さん、吉見さんが当たり前のように、
モノづくりへのこだわりを話してくださったのが印象的でした。
「ヌバックリザード」のアイテムを手にとっても、
そのこだわり、ホスピタリティはひしひしと感じられました。
今回の記事で興味を持たれた方にも、ぜひ実物を手にとっていただきたいです。
下記より、各ブランド、各アイテムについての詳細をご覧いただけますよ。
次回のインタビューもお楽しみに。
万双
東京都台東区上野6丁目4番7号
営業時間:平日 11:00~19:30|土日 10:30~19:30
定休日:毎週水曜日・年末年始
電話番号:03-3832-6461
・オンラインストア:https://www.mansaw.net/shop/
・Instagram:@mansaw_official
・YouTube:万双公式チャンネル
ヌバックリザードミニ財布(小銭入付)
展開色:ブラック・ダークブラウン・ネイビー・ボルドー
内装素材:双鞣和地(万双オリジナルの日本製素材)
内装色:表革に準じる
サイズ:W8.7/H9.5/D1.5(cm)
機能: 札入れx1、カード入れx1、小銭入れx1、ポケットx1
価格:¥24,750(税込)
送料:¥660(税込)
納期:9月下旬予定
RENDO
東京都台東区浅草7-5-5
銀座線浅草駅 / 7番出口から南千住方面に徒歩13分
営業時間:13:00~19:00
定休日:毎週火・水曜日
電話番号:03-6802-3825
・オンラインストア:https://www.rendo-shoes.jp/
・Instagram:@rendoasakusa
・Twitter:@rendoshoes
・Facebook:@rendoshoes
ヌバックリザードタッセルローファー
展開色:ブラック・ダークブラウン・ネイビー・ボルドー
サイズ展開:5.5(23.5cm相当)~10(28.0cm相当)
製法:グッドイヤーウェルト製法
価格: ¥79,310(税込)
納期:オーダー受注後120日
※革の供給量の関係で、各アイテム数量限定となっております。最新の在庫状況については各ブランドまでお問い合わせください。