vol.37〜新井田 隆さん 〜
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
今回登場いただいたのは、BOOT BLACK JAPANの新井田 隆(ニイタ リュウ)さんです。
BOOT BLACK JAPAN所属 Brift H 青山|新井田 隆
靴磨き選手権大会2023優勝。青山に店舗を構える靴磨き&修理店ブリフトアッシュの店長。
靴磨きサービスのほか、出張イベント、バックやレザーアイテムのカラーリング、特殊修理など幅広くシューケアを手掛ける。
🔳今のお仕事をするようになった経緯を教えて下さい。
18歳の時にREGAL SHOESに靴の事は一才わからないまま足を踏み入れました。
そこでシューケアから革靴は長く履いていく文化を知り、革靴にのめり込んでいきました。
販売だけでは物足りないと徐々に感じるようになりお客様の靴などを少しずつ磨かせてもらったり、靴磨き職人になる直前は、ご自宅まで伺って磨いた事もあります。その活動の中でBrift Hの存在を知りカウンタースタイルで靴を磨く姿を見て衝撃を受けました。将来「絶対このお店で働こう!」と思うようになりました。
🔳ご自身のお仕事の、一番のやりがいは何ですか?
誰も挑戦したことのない依頼はやりがいを感じます。1から道具を選んで試行錯誤する事。
そのプロセスから発見があるときはとても楽しいです。
🔳作業や企画を行う中で苦労した場面、乗り切るのが難しかった瞬間などあれば教えて下さい
レザージャケットの塗装を初めて承ったときは大変でした。ヴィンテージで色も鮮やかなブルーだったので色味の再現と衣類へのアプローチや耐久性など磨きのノウハウとは別次元でした。
最初はうまく色味が出せなかったり、すぐに剥がれてしまいましたが塗料と塗り方などを色々と試した末に答えに辿り着いた時はテンションが上がりました!
🔳過去に生み出した企画、デザインや制作物で何か思い入れのあるものがあれば教えて下さい。
YouTubeの企画で革靴のケンさんのビスポークシューズをアンティーク仕上げて磨いた時は苦労しました。
1時間で、磨きのみで仕上げるのはかなり難易度が高く、嬉しさも2倍でした。
製作した本人の目の前で磨くのはめちゃくちゃ緊張して・・・でもこの時は緊張が120%の力を出してくれたのがとても思い出深いです。
🔳日々のくらしの中で心がけていることはありますか?
常に新しい感性やモノに触れること
技術面でも仕事でも壁にぶつかった時、既成概念に囚われないようにすることが壁を乗り越えるコツだと思っています。
座右の銘
実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな
僕は靴磨きの仕事をしていて、向上心を常に持って働くことをモットーにしています。しかし上を見るばかり、当たり前のことや目的ばかりに意識が向いてしまいがちで。20代、30代の今もですけど失敗もたくさんしています。しかし前を向いて進まななくてはと思う時に、自分の精神状態の「向上心」と「謙虚さ」のバランスが取れて前進できるんです。
実家が農家でお米などを作っていて、自分のルーツにも近くてイメージが沸きやすいというか自分自身に沁み込みやすい良い言葉だなあとも思っています。
🔳ご自身の生活の中で、物を大切にするために習慣としていることがあれば教えて下さい。
作り手の顔を思い浮かべること。
先程の革靴のケンさんの動画がまさにですが、作り手の意図まで汲み取れたら靴磨き職人として最高だなと思います。磨きを依頼したお客様もその靴を気に入って購入しているはずなので。
🔳休日の過ごし方を教えて下さい。
音楽を聴くこと、釣り
~靴やレザーアイテムのケア、ファッションについてお伺いいたします。~
🔳靴は何足くらいお持ちですか?
20足くらい
🔳好きな靴のブランドはありますか?
ジョンロブ
🔳好きなレザーグッズのブランドはありますか?
クレバレスコ
🔳一番のお気に入りの靴、レザーアイテムは何ですか?
お気に入りの理由や、思い出、またその靴にまつわるエピソードがあれば教えて下さい。
Whrtsの9部仕立てローファー 自身でデザインさせて頂いたのでお気に入りです。
🔳靴、レザーアイテムのお手入れについてお聞かせください。
・ケアのこだわりや、好きなアイテムはありますか?
人ができないことこそ、職人としての価値がある気がしていて、なかなか一般的に使いづらいような、尖ったアイテムが好きです。自分独自のアプローチで別の使い道を見出すことに拘っていますね。モウブレイさんのワックスクリーナーとハイシャインプライマーはとても好きです。
優しく使えば、コンディションを整えてくれて、しっかりを拭き取れば頑固な汚れも取れるワックスクリーナーは経験値があればあるほど自由自在に使えるクリーナーだと思います。
ハイシャインプライマーは速乾性の高さと革への固着力が強いので部分的に厚めに塗りやすくて、さまざまな鏡面の形や艶感を作りやすい点が他にない特徴だと思います。
靴のデザインに合わせた輝きだけではなく、光らせる場所をより細かく調整できるので、自分の磨きの表現の幅が広がってとても気に入っています。
・ケアについて、何かお考えがあれば教えて下さい。
素材と使用するアイテムの特性や性質を見極めて、アプローチする事。
🔳ご自身の靴や靴箱の保管についてこだわりなどあればお聞かせ下さい。
一晩置いてブリフトアッシュオリジナルのツリーに入れること
シューケアに関しては、正直いつでもできて革のコンディションは良い状態は保てます。
しかしツリーを入れることをサボってしまうとどんなに磨きを頑張っても萎れてしまうので必ず入れています。
ケアはあえて過保護にせず、革の経年変化や反応を見るようにしています。
そうすることで、お客様と同じトラブルを直に自分の靴で検証できるので。
🔳足元やファッションでこだわりはありますか?
18歳ごろから90年代のイギリスの音楽とファッションには影響を受けはじめて中でもジャイルズピーターソンやジャミロクアイにハマっていました。同じころにファッションに興味を持ち始めてたまたま地元のセレクトショップで18歳の時にマルジェラのジャケットを試着させてもらいました斬新なデザインや袖がやたら長くて・・・衝撃を受けました。笑
(その時には凄さは1ミリもわからなかったのですが・・・)
デザインの理由が知りたくて、デザイナーの背景やアイテムのディテールを気づいたら調べるようになっていてどんどんのめり込んでいきました。
今のスーツやクラシックのスタイルは、当時クリスチャンディオールのデザイナーだったエディスリマンがきっかけでサヴィルロウを知りました。元々イギリスの音楽が文化が好きだったので、スーツやクラシックスタイルにより興味を持つようになりました。今でもブリティッシュ寄りなスーツが好きですね。
🔳おすすめの靴やアイテム、または今後挑戦したい靴やアイテムを是非ご紹介下さい。
今は縁もあって、Whenというビスポークシューメイカーの小林くんと一緒に「Whrts(ワーツ)」職人集団的な意味合いで造語なんですけど、自分のブランドも少しずつ作っていっています。いろんな物づくりをする人と関わって面白いモノを作れたら楽しいだろうなと思って立ち上げたブランドで、今はパターンオーダーの革靴をリリースしましたが革靴だけでなく、靴磨きを広めるべく、磨き職人らしい視点で面白い物づくりができたらと思っています。
インタビュー内容は以上です。
次回のインタビューもお楽しみに。
Brift H 青山|新井田 隆
靴磨き選手権大会2023優勝。青山に店舗を構える靴磨き&修理店ブリフトアッシュの店長。
靴磨きサービスのほか、出張イベント、バックやレザーアイテムのカラーリング、
特殊修理など幅広くシューケアを手掛ける。
◆Instagram
店舗:https://www.instagram.com/brift.h_aoyama/
個人:https://www.instagram.com/niitaman_brift_h/
◆HP
https://brift-h.com/
◆店舗情報
名称:Brift H 青山
住所:107-0062 東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
電話番号:03-3797-0373
営業時間:平日 12:00~20:00 (L.O 18:45)
土・日 11:00~19:00 (L.O 18:00)
定休日:火曜日