vol.35〜アピオ 河野 仁さん 〜
2023年10月11日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
インタビューにご協力してくださったのは、スズキジムニーのパーツメーカー アピオ株式会社代表取締役 河野 仁さんです。
アピオ株式会社|河野 仁
ジムニーのパーツメーカー代表の他、雑誌「趣味の文具箱」で連載を持つ。
バッグや手帳など皮革製品を愛用し、手書きのイラスト日記を約6年間毎日書いている。
|「現在の仕事」について聞かせてください
アピオという会社でスズキジムニーに付けるオリジナルパーツを開発、販売するメーカーです。17年位前からは、新車の状態でオリジナルパーツを取り付けたコンプリートカーというジムニーも販売しています。レストランで例えると、シェフのお薦めのランチセット、前菜、サラダ、からメイン、デザートまで組み込まれているようなイメージですね。
|コンプリートカーという新しいカテゴリ―
その昔は、自分で一つ一つ研究してパーツを選ぶ人が多かったのですが、マニアックなお客様が、少しづつ減ってきました。マニアックではない人が増えてきた時に「色々パーツを選びたいんだけど、何をセレクトしてよいかわからないので、何かお薦めのものはないですか?」というご要望が多かったので、最初からこちらがパーツをセレクトして取り付けたコンプリートカーというものを作りました。今でこそコンプリートカーとネット検索すると色々な車種が出てきますが、当時はコンプリートカーという言葉が無かったので、問い合わせは多かったですね。それをECで販売していたので、全てメールなどでやりとりして、一度も来店せずに車を納車した方もいましたね。今から思うと、コンプリートカーと車のEC販売の先駆けでした。
|車のネット販売の先駆け
アピオがHPを作ったのが1997年のことです。まだメーカーのホームページも無かった時代でした。インターネットの創成期で、WEBもダイアルアップの時代。ホームぺージの容量が1メガあれば十分でした。当時の社長に言ったら、ステッカーとかは売れるかもしれないけど、サスペンションとかは売れないだろうと言われ、僕もそうかなと思っていたのですが、初月から50万円くらい売れました。理由があって、ジムニーのユーザーは割とマニアックな方が多くて、当時から早々とインターネットを使っている方が多かったんです。ジムニーとインターネットユーザーがマッチしてたということですね。また、若い方が多かったので、昼間に銀行いけないからカード決済したいという方が多く、それもあって2001年の早い段階で、まだあまり知られていなかった楽天市場に出店しました。
|パーツメーカーとしてのやりがいは?
スタートはジムニー用のマフラーとかサスペンションとかモノづくりの面白さがありましたが、最近はイベントなどを通じて、ジムニーをご購入いただき、お客様から「ジムニー買ってよかった。」とか「人生変わりました」言っていただいていることですね。
|思い入れのある開発商品は?
最近ですとアルミホイールですかね。最近は、近代的でスポーティなホイールしかない中で、個人的に元々、鉄チンホイール(鉄ホイール)が大好きでした。ジムニーでも昔は鉄チンホイールがありました。本当は鉄で作りたかったのですがロットの関係などで難しくて、鉄チンぽいデザインのアルミホイールで作ったら大ヒットしました。
|雑誌「趣味の文具箱」
僕は、レザー製品や文具が大好きで、好きが高じて雑誌「趣味の文具箱」で連載を持っています。編集長とタイトルをみていて、趣味っていう単語の意味を考えると日本語って深いなという話をしたことがあるのですが、趣き(おもむき)を味わうって書くじゃないですか。趣きを味わうものって、車で例えれば、数値化できない乗っている時の振動だったりします。スポーツカーが好きな人でも、そういう意味でジムニーが一番車っぽくて、面白いって言ってくれる人もいる。レザー製品も磨いてる時ってなんか無になれるじゃないですか。ジムニー乗っている時とか、万年筆で筆記している時とか、割と官能の世界が共通だなと思っていて、まさに趣きを味わう感覚。それはおそらく人類が長年生きていく中で培われたDNAというか本能的な埋め込みだと思うんですね。文字を書くのが好きな人は、本当に書くことが好きで、朝起きたらとにかく何でもいいから書きたいっていう人もいるし、僕は毎日、絵日記をトラベラーズノートに書いてるんですが、日記も何かにノルマがあるとか、誰に頼まれたものでもないけど、自分で毎日書いているのが楽しいので続いてますね。
|手書きのイラスト日記
マンスリー絵日記を始めたのは6年前ですね。毎朝書いてます。始めたきっかけは、友人がスケジュール帳に描いていたイラスト。ラーメン食べたときは、ラーメンを描いていたのを何気なく見て、文字じゃなくて絵で埋めるのって面白いなと思って。寝る前に描くよりは、頭がすっきりしている翌朝に描くことが多いです。朝に描くことで前日の振り返りにもなります。写真もスマホでたくさん撮っているので、その中からメインになる画像を選んで描いてます。
描く時間は、15分~30分位。先に絵を描いてあとは余白に文字を入れていきます。文字は万年筆、絵は色鉛筆で描いてます。
|コンセプトは「日常を旅する」
トラベラーズノートに出会った時に、ノートのコンセプトが「旅するように毎日を過ごす」だったんですよ。トラベラーでノートの産みの親でもある飯島さんから「旅ってどう思いますか?」と聞かれたのですが、飯島さんの考え方は、例えば今日お会いして仕事で打ち合わせするのも旅だと思うようにしているそうです。要は日常の仕事も旅だと思うことで好奇心が沸くという感覚みたいですね。旅に出ると普段はしないけど、写真を撮ったり、記念にシール貼ったりするじゃないですか。あれを日常ですることによって毎日が旅する感覚になれる。そのためにこのノート作りました。とお話を聞いて、なるほどと感銘を受けました。ジムニーも小さいし、四輪駆動だし、知らない道をちゅうちょなく入っていける。ジムニーいけない道はほぼないので、トラベラーズノートの「日常を旅する」に共感して、うち(アピオ)も「日常を旅する」なんです。
|トラベラーズノートで日々の生活が楽しくなる
子供の頃って夏休みが長く感じたし、元気で好奇心も旺盛。でも年を重ねるとともに、友達に誘われても、だんだん活動するのがおっくうになってきますよね。でも、こういう手帳を使っていると、ネタにもなるし、面白そうだから行こうかなという気にもなります。毎日が夏休みという感覚が大人になっても考え方の根幹をなしています。色々な所に行けば出会いもあるし、人との広がりもありますしね。
|革の手帳を愛用
手帳は、デザインフィルさんM5 PLOTTERを使っています。革は栃木レザーです。イベントで見つけました。原宿にある手作りソファの会社の商品で、ソファの端切れで作られた革の手帳なんです。実は、そのイベントが面白かったんですよ。産学連携のプロジェクトで、大学生に来てもらっていました。今の学生さんは、レザー製品の製造のために、わざわざ牛や豚などの動物を殺して作っているみたいなイメージを持っている人がすごく多いそうなんです。だから化学繊維(合成皮革)を使うと言っている人もいたくらいで「それは違うんですよ!」と教育するためのプロジェクトでした。世界中でどれくらいの食用の牛の革がでるのか、元々、太古の時代からあるSDGs(持続可能な開発目標)の極みのようなものがレザー製品であった。革そのものはとても丈夫なので、お手入れしていれば廃棄も減り長く愛用できる。食肉用などの動物からお肉をいただく時に出る「皮」を鞣して「革」を製造して生活用品に転換する。動物からいただいた命は余すことなく活用しているということを勉強しました。大学生のプロジェクトでしたので新鮮でしたね。目線や感じ方など。また、そこに来ていた業者さんが、皮革のエイジングのプロでした。新品の状態でエイジングをしながら加工してもらって、何もしないよりもさらに表面が保護でき、使い込んだ感じにしてもらったのがこの製品で、それ以来愛用しています。あと、革の手帳やお財布以外に、鞄も大好きで、フェリージなどをよく使っています。
|愛用の革製品のお手入れ方法
M.Mowbrayアニリンカーフクリームを使ってます。合っているかわからないですが(笑)。たまたま、このアニリンカ―フクリームをフェリージさんのショップでおススメされて、それからずっと愛用しています。アピオのオリジナルのレザーグッズも開発していています。栃木レザーとコラボしてお財布やジムニーのキーケースなどを企画、販売していてそれにも使ってます。本当に革製品が好きで、皆様にもぜひお手入れしながら、革の経年変化を楽しんで使っていただければと思っています。最近、実は生まれて初めて手縫いのオーダーシューズをFANS ETERNAL.で注文しました。今度は本格的な革靴を終の靴としてお手入れしたいですね。
インタビュー内容は以上です。
次回のインタビューもお楽しみに。
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