2022年11月10日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
インタビューにご協力してくださったのは、お財布やベルトなどの革小物を取り扱う「革キチ」で、オリジナルブランドの企画及び販売を手掛ける柴山公範さんです。
革キチ|柴山公範
茨城県筑西市生まれ。
在学中に出会った先輩の影響によりアメカジに目覚める。
高校卒業後は、幼稚園の教諭の免許取得のため、専門学校に2年間通う。
しかし、旅先での札幌での縁をきっかけに、全く異なる業界である質屋にて3年間勤務。高級ブランドの革製品に触れる。
24歳からは、上野近辺にある革小物の小売店や、セレクトショップで販売を経験する。
その後、独立し、高級革小物ブランド「JOHNNNY LEATHER」を立ち上げる。
現在は、上野アメ横にあるコアな革好きが集う革の基地、「革キチ」店頭にて販売を行う。
シルバーアクセサリーなどアメカジに関連する装飾品にも精通しており、豊富な知識を生かした接客はお客様からの信頼も厚い。
|全てのきっかけは「アメカジ」から
高校生でヴィンテージデニムのレプリカブーム、俗にいう「渋カジ」を経験しました。
地元でよくしてもらっていた先輩が、「上はヴィンテージのネルシャツ、下はレプリカのデニム、足元はレッドウイング」というスタイルで。ひとつのものを長く履くという発想が、学生の自分には無く、色落ちの美しさや育った革の風合いに魅了され、興味を持つようになりました。
以来、雑誌の掲載を見て、地元の茨城から上野のアメ横までアメカジのアイテムを探しに行く日々でした。今思い返すと、アメカジにどっぷり浸かっていましたね。
|試行錯誤した20代前半
高校卒業後は、幼稚園の教諭免許を取得するために2年間専門学校に通いました。
ところが、あるときに旅行で訪れた北海道で、ご縁があり質屋で働くことにしました。
地元茨城、在学中に通い詰めていた上野ではあまり触れてこなかったハイブランドをはじめとする高級な革製品に触れました。
約3年ほど働いた後、東京に戻るタイミングで、地元からアクセスの良い上野近辺で、友達の家に居候しながら、革小物の小売店で働くことを決めました。
|知識を試される革業界
入社して一番最初に苦労したのは、「知識」です。
当時は、本皮か合皮かが判らないぐらい革の知識がありませんでした。
オーナーさんに、長年愛用していたベルトを「そんなしょぼいベルトしてんじゃない」と酷評されて。泣く泣く処分したことを覚えています。
その後、一から教えてもらい、本格的なサドルレザーのベルトを購入しました。
こだわりのお客様が多く来店されていたので、革だけでなくアクセサリーにも詳しいことに衝撃を受けました。接客時は逆にお客様の身につけているアイテムに関する背景や歴史について教えていただくことが多かったです。
そこから刺激を受け、ジュエリーやデニム、ブーツなど自分のお店では取り扱いのない製品やブランドについても調べて知識を深めました。私が働いてた当時の1998年頃はインターネット黎明期、今のように調べればたくさんの情報が出てくる時代ではありませんでした。ゆえに、書店で分厚い専門誌を買い込んだり、知識のある方に教えていただいたりと、情報をかき集めました。
当時の上司(現・革キチ オーナー)と共に研究をする日々を過ごすうちに、勉強代だけでかなりの投資をしたと思います(笑)
3年ほど働いた後、そんな上司と共に別会社に入社しました。
今まで勤めたどの会社よりも規模の大きな企業だったので、製品知識だけでなく製品を作るまでの仕組みや人脈、店舗運営のノウハウなど「商売の仕方」を学ぶことができました。
ただ、8年ほど働いたあたりで、退社を考えるようになりました。
当時の自分が36歳ぐらい、いろいろな経験をしたあとだったこと、年齢のことなどが重なって次に何をするかをずっと考えていました。
|意識した独立
最終的には開き直って、ブランドを立ち上げて独立することを決意しました。
勤めてて、そこが終わったんだったら、もう最後なんで、原点に立ち戻ってと(笑)
もう自分のブランドで勝負しようというね。
もちろんただの開き直りだけじゃなく、今まで培ってきた「革を見る審美眼」「様々な宣伝媒体とのコネクション」「店舗運営のノウハウ」「ものづくりの仕組み理解」など、ブランドを運営するために必要な能力を身に着けていたのもあります。
こうして、自分が革製品に携わるきっかけだった「アメカジ」の中でも欠かせない「デニム」に合う革製品のブランドである「JOHNNY LEATHER」(ジョニーレザー)を立ち上げました。
|唯一無二のネイビー
すでにお伝えした通り、私が企画を担当している「JOHNNY LEATHER」は、デニムをイメージソースにしています。国内外を問わず素材を選びぬき、私の今までのキャリアで見つけ出した日本国内の優れた工場での生産にこだわったブランドです。
また、製品にメインで使用している「ブライドルレザー」は、肉厚で重厚な質感かつ、タフにガシガシ使い込んだあとの経年変化が魅力です。この素材自体は他のブランドさんでも使われていますが、「JOHNNY LEATHER」のブライドルレザーは深みのあるネイビーが特長です。
使い込むことで、表面のロウが薄れ、愛着の沸く自分だけのモノに育ちます。
アメカジでも人気のある「デニムジャケット」や「エンジニアブーツ」のようなアイテムと共に、タフに使いながらエイジングを愉しんでいただけます。
柴山さん私物:半年愛用のJOHNNY LEATHER。
デニムを思わせるステッチの色使いも魅力。
アメカジファンから人気の集まる「ネイティブ・アメリカン」の部族で、
重要な意味を持つ「イーグル」モチーフのフラップ。
半年間愛用の柴山さん私物。
パッチ内のロゴには、大地の守り神であるリザードが鎮座している。
|経年変化を愉しむために必要な「お手入れ」
革について様々な知識を吸収する中でも、特に重要だと感じたのが「お手入れ」です。
いくらガシガシ使える丈夫な革製品でも、長く愛用するには定期的なメンテナンスは欠かせません。
当店にて販売を行っているM.MOWBRAYの製品は、誰が使っても扱いやすい製品が多い印象ですね。
とくに、「M.MOWBRAY デリケートクリーム」はお手入れを始めたばかりの方でも、失敗しない安心感があります。水分が豊富で、塗り込んだ後もベタつきづらいので重宝します。ブライドルレザーとも相性がいいですね。
安心してケアを行える充実のラインナップ
|独立から革キチ入社、店舗で伝えたいこと
独立から5年ほど経った2015年、個人でできることに限界を感じたこともあり、現在の「革キチ」に入社しました。「JOHNNY LEATHER」ブランドも革キチの商材のひとつとして取り扱っています。個人でやっていた頃にはなかったメリットは多いですが、中でも大きいのは実店舗を持つことができる点です。入社前は製品の仕入れ等のコストだけで、資金面のやりくりが難しかったですからね(笑)
だからこそ、お客様には気軽にお店に来ていただきたいです。
革素材は特にネットやSNSの画像だけでは伝わらない魅力があると感じます。
革が好きな方はもちろん、本格的なモノが欲しいという方や、あまり革製品に馴染みのない方も大歓迎です。製品は購入してもらわなくても構わないので、「革」ってどんなものかを気軽に体験のできる「秘密基地」のような場所にしていきたいですね。
インタビュー内容は以上です。
物腰が柔らかく、お客様との会話を大事にされている柴山さん。
どんな質問にも優しく丁寧に答えてくださった姿が印象的でした。
そんな柴山さんの立つ「革キチ」の店舗では、「JOHNNY LEATHER」を始めとするこだわりの革製品に加え、お手入れのサービスもご利用いただけます。ただ作業するだけでなく、手順や、細かなポイントも実際にご覧いただけます。
お気に入りのアイテムを長く使いたい方は、ぜひ一度店頭に足を運んでみてください。
次回のインタビューもお楽しみに。
革キチ