シャンクから見る靴の耐久性に対する考え方②
こんにちは。
FANS.浅草本店のYUMA.です。
前回シャンクの役割と重要性についてお話ししました。
今回は素材ごとの特徴とシャンクに求められるスペックについてお話しします。
まずシャンクに採用されている素材から見ていきましょう。
・木
・革
・竹
・鋼鉄
・樹脂
・ファイバー(白い方)
なんともいろいろありますね。
これはそれだけ古くからシャンクの歴史があるということの証明です。
樹脂やファイバーは比較的新しい素材です。
対して木や革は古くから用いられている素材と言えます。
この辺りは技術発展と共に変化していった要素ですね。
これらの素材に共通して言えることは
「かたく、なおかつしなる」
荷重を支えるシャンクはしっかりとした剛性を持ちながら
屈曲に対してバネの役割も果たします。
単に硬いだけだとポッキリ折れてしまいます。
バランスが重要なのです。
とは言え木製や革製では素材の特性として長年にわたる耐久性は望めません。(水分や衝撃によって傷んだり割れたりする)
しかしこれらの素材はオールソールすることを想定しているイギリス靴などに多く採用されています。
修理のたびにシャンクも交換するので長期的な耐久性はそこまで必要ではないという考え方とも言えるでしょう。
軽くて適度にしなる天然素材を用いる伝統的な仕様は、革靴という文化が培ってきたロマンを感じる上でピッタリの素材でしょう。
対して現在主流になっているのが樹脂製と鋼鉄製のタイプです。
樹脂製のメリットは軽さ、耐水性、そして多様な成型です。
軽さや耐水性はイメージしやすいでしょう。いわばごっついプラスチックです。
もうひとつ良い点は大ぶりかつ厚みのある成型が可能なため、ふまず部分の肉盛りとしての役割も果たせます。
ふまず部分のソールがこんもりと盛り上がっているソールは高級靴にしばしば見られる特徴ですが、通常コルクなどの中物(詰め物)でふくらんだ形を作ります。
それがプラシャンク一枚で作ることができるので製造コストが安く済むという利点があります。
プラシャンクを採用しているところはたくさんありますが、
代表的なところを挙げると
リーガル・スコッチグレイン・ヤンコなどなど。(もちろんラインによって樹脂以外も使っています)
鋼鉄製シャンクは他とは比べ物にならない耐久性があります。
そもそも素材が強いのは当然ですが、
強度を上げるための溝付け(ビード)加工(Fluting)が施されているのも特徴です。
↓縦方向に波状の溝があります。折り曲げた紙が強くなるのと同じ原理ですね
シャンクには耐疲労度試験というものがあり、連続する屈曲に対する抵抗性を測定することができます。
この試験にクリアできるかどうかがシャンクの基準になります。
この試験は元々 SATRA(英国靴研究所)が考案した試験でしたが
修正が施されたのちISO( 国 際 標 準 化 機 構)に採用され国際的な試験となりました。
簡単に説明すると専用試験機にセットされたシャンクをひたすらグニグニたわませる試験です。
何回目のたわみで破断したかを計測することでそのシャンクの強度を計ります。
試験の基準は以下の通り。
ヒールの後部高さ: 屈曲回数
50 mm未満 :3,000回以上
50〜74 mm: 8,000回以上
75〜99 mm: 20,000回以上
100 mm以上: 60,000回以上
75mmからグッとハードルがあがりますね。
ハイヒールと呼ばれるものはやはりかなりの耐久性を持っている必要があることがわかります。
このようにシャンクとは文字通り足元を支える縁の下の力もちなのです。
ありがたや~
いかがでしたか。
シャンクにわたるややマニアックなお話しでした。
見えないけれどあなたの靴にも入ってる。
シャンクのこと、たまに思い出してあげてください。