Meister interview vol.28 後編 〜 ASHIDO HOKKAIDO 佐藤我久さん〜
2022年04月19日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
インタビューにご協力してくださったのは、靴磨き職人の佐藤我久(さとう がく)さん。
前回から2回に渡り、お店、靴磨きや靴修理に関する様々なお話を伺いました。
前編では、愛知県名古屋市で靴磨き靴修理専門店「GAKUPLUS」(ガクプラス)を運営後、
新たに北海道札幌市で靴修理・靴磨き・オーダー靴専門店「ASHIDO HOKKAIDO」(アシドウ ホッカイドウ)を運営することになった約1年間にまつわるお話をお届けいたしました。
後編では、北海道で多く履かれているというワークブーツに関して、
ブーツが履かれる理由、靴クリーム、ケアやお手入れにまつわるお話をお届けいたします。
ASHIDO HOKKAIDO|佐藤我久
北海道帯広市生まれ。
18歳までを十勝・帯広市で過ごし、その後、愛知県名古屋市へ。
2年間の靴販売店アルバイトを経て、20歳から路上での靴磨きを開始。
その後、大学在学中に自身が店主を務める靴磨き靴修理専門店「GAKUPLUS」を立ち上げる。
約6年間の運営を経た際、故郷である北海道での再スタートを決意。
「北海道の ” 足 ” 元から世界を支える ” 道 ” を作る」=「足道北海道」
というメッセージを込め、新店舗「ASHIDO HOKKAIDO」を札幌市でスタートした。
過酷な環境にも対応した ” ラバーソール ” を、
1人1人の靴や生活スタイルに合わせて提案する店舗コンセプトが評価を集め、
現在では北海道の内外を問わず多数の相談が寄せられている。
佐藤さんの生い立ち、これまでの軌跡は、
ASHIDO HOKKAIDO 公式Instagram
→ ハイライト
→「誕生秘話」
よりご覧いただけます。
あわせて、チェックしてみてください。
|北海道、多く履かれているのは ” ブーツ ”
本州から北海道に来て、感じた足元の違いは “ ブーツの割合が多いこと ” でした。
僕と靴修理職人の北村航くんの地元である十勝は、冬場の気温が氷点下20℃を下回ることも少なくありません。そのため、雪を防ぎ、寒さから足を守るために、最低限足首まで、できればふくらはぎまであるようなブーツが必須です。
革を使ったものであれば、「REDWING」(レッドウィング)、「Danner」(ダナー)、「Dr.Martens」(ドクターマーチン)、「Paraboot」(パラブーツ)、「WHITE’S BOOTS」(ホワイツブーツ)、「WESCO」(ウェスコ)や「Timberland」(ティンバーランド)など。
その中でも油分を多く含む革である “ オイルレザー ” をベースとしたブーツが多く持ち込まれます。
|北海道のブーツ、皮革に求められるのは “ 油分 ” ではなく…
持ち込まれる “ オイルレザー ” の靴は「素材名通り、 “ 油分量の多いクリーム ” でお手入れをしている」という方が大半です。
しかし、自分自身が実際に感じたのは “ 水分 ” を補給することの重要性でした。
というのも、雪道や雪解け路面で靴が濡れ、そのまま車に乗る。北海道では車移動をされる方がとても多く、足元に備え付けられたヒーターに靴がずっとあたっている状態が続きます。
車から降りた後は、屋内も温かく乾燥していることで、イメージ以上に靴は早く乾くんです。しかしその反面、水分が蒸発する際に革の油分までとんでしまう。お風呂上がりのお肌と同じように、カサカサと乾燥しやすいんですよね。
だからこそ、持ち込まれるブーツの多くは、とても乾燥していました。そんな、カラカラに乾いてしまった状態の靴はクリームの吸い込みが激しいのが注意点です。この状態の革に “ 油分量の多いクリーム ” をいきなり塗ってしまうと、油を吸い込みすぎて、シミになりやすいですし、仕上がりもベトッとしやすいです。
一方で、普通の乳化性クリームは塗っても直ぐに水分が揮発してしまい、持続力に欠けます。そのため、北海道のブーツに適した新たなクリームを探す必要があったんです。
|たどり着いた、北の大地に適したクリーム
「ASHIDO HOKKAIDO」|ブーツクリーニング
(画像左:Before|画像右:After)
年間のうち半分以上、革靴は濡れる環境だと再確認して以来、
地元北海道の職人さん達が何を使っているのかを聞いて回りました。
その中で、北海道でおそらく一番長く靴磨き店を運営されている、靴磨き専門店「シューケア札幌」さんに教えて頂いたアイテムが、
「M.MOWBRAY プレステージ リッチデリケートクリーム」
「M.MOWBRAY プレステージ ビーズエイジングオイル」
の2つだったんです。
さまざまなアイテムを購入し、試す中で一番ハマりました。
今では「ASHIDO HOKKAIDO」内でも、断トツの人気商品です。
|2種類のクリームを併用する重要性
「リッチデリケートクリーム」は水分が多く、ベトつかず、シミにもなりづらいクリームです。汚れ落としや、水洗いをかけた後、最初にたっぷりと塗ることで、乾燥した皮革にもスゥーっと馴染みます。
油分の多いクリームを塗る前に、このクリーム塗っておくと、革に必要な水分を補給しながら、乾燥した革の過渡な吸い込みを軽減できます。だから、その後で油分の多いクリームを塗っても、シミやムラになりづらいんです。
その後で、油分、ロウ分の豊富な「ビーズエイジングオイル」を塗るのも大切です。
スキンケアにおける “ 化粧水 ” と “ 乳液 ” のように、最初の「リッチデリケートクリーム」の水分を油分で閉じ込めるのに加えて、ロウ分がブーツを雪や水から革を守ってくれるんです。
どちらも「補色力」「光沢感」といった、目で見てハッキリと分かるような特長はありません。しかし、90%以上が天然成分で作られていることもあって、さなざまな状態の、たくさんの革靴に使うことができるので、重宝しています。
この2つのアイテムは北海道の足元には必要不可欠だと感じますね。
|ひとつでも十分、ブーツ用の新クリーム
SADDLE UP ブーツクリーム|税込 1,650円
「リッチデリケートクリーム」と「ビーズエイジングオイル」。
これらを同時に使うと革のコンディションをアップしてくれます。しかし、靴磨きに精通していない方に「クリーム2つでお手入れをしてください」のは、すこしハードルが高いと感じるもありました。
だからこそ、「ひとつ、これがあればお手入れは大丈夫」とオススメできる、そんなクリームがあればいいなと思っていました。
そんなときに、たまたまサンプルを送ってもらったのがこの「SADDLE UP ブーツクリーム」だったんです。
|オイルベースなのに、ベタつかない。
「ブーツクリーム」は、オイルベースでありながら、水分も豊富に含まれています。この “ 油分 ” と “ 水分 ” のバランスが絶妙で、少量で靴全体に伸ばせますし、油分が多いので水分を蒸発させず革の中に閉じ込めてくれます。
また、染料ベースなので、革の風合いを生かした仕上がりで、ムラになる感じもないです。北海道の厳しい気候の中でも、オイルレザーのお手入れはこれひとつで十分なのではないかと感じました。2022年1月上旬、サンプル完成時にクリームを送っていただいたんですが、ラベルがないだけで、もう発売しても良いんじゃないかと思っちゃうほどでしたね。
ご自宅ではあまりお手入れをされない方にも、ブーツメンテナンスに慣れ親しんだ方にも、ぜひ手にとっていただきたいと思ってます。
インタビュー内容は以上です。
今回、我久さんにはお忙しい中、リモートでの取材にご協力いただきました。それに当たる事前のリサーチで、我久さんファンの方々、今までのお客様が送る温かいコメントなどを拝見させて頂きました。
インタビューは対面ではありませんでしたが、
「この1年間で北海道の方々が、過酷な環境の中で毎日を過ごしているかを再確認できました」
「この街に住む、そんな方々の足元に寄り添いながら日々の生活を笑顔に、豊かに、していこうと思います」
など、熱を持って話してくださった我久さんの姿勢から、これまでコメントを贈ってきた方々に強い共感を覚えました。
そんな、北海道の生活を足元から支えている佐藤我久さんに加え、ブーツ好きにはおなじみの「ブーツのミカタ」鈴木理也 氏。ブーツに精通したお2人を迎え、「SADDLE UP ブーツクリーム」のリリースを記念した、コラボレーションイベント開催が決定しました。
・6月上旬の一般販売に先駆けた「SADDLE UP ブーツクリーム」の先行販売
・佐藤我久さん、鈴木理也さんによるトークセッション、お手入れ実演
・「ASHIDO HOKKAIDO」オリジナルブーツカスタムの新提案
など、内容が盛りだくさん、ブーツ好き必見のイベントです。
下記より詳細をご覧いただき、ぜひご参加ください。
次回のインタビューもお楽しみに。
ASHIDO HOKKAIDO
|店舗情報
・住所北海道札幌市中央区大通西15丁目3-12 大通西ビル 1階
・営業時間 11:00-19:00(月曜定休)
・TEL:011-600-1324
|各種HP、SNS
・公式HP:https://ashidohokkaido.business.site/
・Instagram:@ashido_hokkaido
※修理見積もり、その他お問い合わせは、公式HPよりご利用いただけます。
※最新の店舗情報に関しては、事前に公式HPをあわせてご確認ください。
鈴木理也 氏 × 佐藤我久 氏
コラボレーションイベント 詳細
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