Meister interview vol.23 〜 B.C.Works 藤本英樹さん〜
2021年12月20日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
今回は岡山県にて、木製バット専門のブランド「B.C Works」の企画や、
グローブの加工、リペアやケアを行う「Baseball Garage」の立ち上げなど、
野球に欠かせない道具にまつわる活動をしている、藤本英樹さんにお話を伺いました。
B.C Works|藤本英樹
1978年、岡山県岡山市生まれ。
幼い頃から野球に触れて育つが、高校進学後は一時、別の道を志す。
その後、家業である野球ショップを継いだことをきっかけに、再び野球の世界へ。
2015年以降は独立し、オリジナルの木製バットブランド「B.C Works」や、
野球グローブの加工、リペアやケアを行う「Baseball Garage」を起ち上げ、
野球をこよなく愛する人々を ” 道具 ” から支えている。
|野球から離れた高校生時代
幼い頃からずっと野球をしていて、高校ではいわゆる ” 強豪校 ” に進み、
当然そこでも野球は続けるつもりでした。
しかし、当時の実力ではチームが求めるレベルには通用せず…。
そんなことがあり、一時期は野球から離れて、音楽をやったりしてました。
|再び野球の世界に戻ってきた瞬間
そんなこんなで野球から離れて、高校卒業後は地元の企業に勤めていました。
しかし、僕が19歳のときに父が他界したのをきっかけに、
家業である野球ショップを継ぐことになりました。
再び野球の世界に戻ってきたわけですが、
選手としてプレーしていた頃とは、すこし異なる立場で野球と向き合えたので、
現役である頃よりも深く野球と向き合い、のめり込んでいったような気がします。
野球ショップとして選手のプレーを支える、いわば縁の下の力持ち的な存在として、
グローブやバットなどの ” 道具 ” に対しては特に追求していましたね。
|独立のきっかけを与えてくれた出会い
僕が家業に携わり始めてから17年後の2014年。
残念ながら、運営していた野球ショップは廃業になってしまったんですよね。
けど、その野球ショップによく来てくれていた子との出会いがきっかけで、独立を決意しました。
彼は「将来、指導者になりたい」と、
” 選手 ” ではなく ” コーチ ” として大学で野球をしていました。
そんな彼に「自分に合うノックバットがない」と言われたことが、独立のきっかけです。
通常、野球コーチは守備の練習を行う際に ” ノックバット ” を使うのですが、
当時、「練習で使えるノック用のバット」には選びしろがなくて…。
既成のものも様々試してもらいましたが、本人が納得できるものは見つかりませんでした。
そんなことを続けている間に、
「既製品で対応できないなら、0から作ろう」
と、強く感じ、気がついたら独立の道を歩んでいました。
|最初の一本を作り上げるのにかかった歳月
独立を決意してノックバットを0から作ろうとしましたが、本当に苦労の連続でしたね。
きっかけをくれた大学生の彼のために作った一本は、
ボールに触れることなく、ボツになってしまいました。
「B.C Works」のバットは、富山県にある南砺(なんと)市の工場で作っているのですが、
ブランドとして正式にリリースした最初の一本が完成するまで、
何本作り直してもらったか数え切れないほど、試行錯誤を繰り返しましたよ。
納得できるモデルが完成するまでには、5年かかりました。
|選手にフィットする一本、それを実現する技術
「B.C Works」は木製バットを専門で作っています。
木で作られたバットは、金属バットとは異なり削りやすいのが特長で、
使う選手の要望に合わせてコンマ1mmレベルの調整ができます。
そして、そんな要望を実現してくれるのが、富山県南砺市の工場なんです。
採用する木材にも厳しい基準がありますし、
それをさらに、選手ごとのクセに合わせて ” 手彫り ” で形を整えてもらってます。
時間も手間もかかりますが、その分、選手にフィットする本当の一本を作れるので、
他にはないバットとして、たくさんのお客様からご好評をいただいています。
|野球に欠かせない存在である ” グローブ ” のリペアについて
「B.C Works」の活動をはじめる前には、
野球には欠かせない ” グローブ ” のリペアやケアに関する技術も追求しましたよ。
専門的なことは何も分からなかったので、
大手メーカーさんの研修に行ったり、
実際に自分で手を動かしたりして、独学でひとつひとつ、身につけていきました。
家業が廃業してしばらくは、
別の店舗さんの中にショップインショップとしてお店を構えていましたが、
昨年、2020年には自宅の一部を改装して、工房兼店舗の「Baseball Garage」もオープンしました。
|グローブ修理を続けてきた中でもらった言葉
まだ家業が廃業になる以前、
大阪のお客様から、岡山にあるうちのお店に依頼がありました。
聞くと、依頼主の方の息子さんが使っているグローブを修理したいとのことで。
インターネットで購入したものらしく、どこのお店からも
「よそで買ったものは修理できない」
と、門前払いをされてしまったと、ご相談をいただいたんです。
うち(=Baseball Garage)はどこで購入したグローブでも、基本的にはお預かりします。
そこからグローブをお直し、お渡ししたときに、
「やってくれたのは藤本さんのお店だけ、それがすごく嬉しかった」
との言葉をかけてもらいました。
そのやり取りがあった当時から12年ほど経ちましたが、その方とは今でもお付き合いがあります。
僕が独立したときは、依頼主の方にパンフレットの作成なんかもいただいて、
お客様として来てくださったはずなのに、すっかり僕の方がお世話になっているくらいです(笑)
|グローブを長く、使い続けるためのコツ
グローブにも、使う方それぞれの思い出が詰まっていると思います。
そんなグローブを長く、使い続けるためには、
適切なタイミングでのリペアは必要ですが、定期的なお手入れも重要なんですよね。
日々お越しくださるお客様にも、これはお伝えしています。
激しいプレーの中で ” スレ ” や ” 泥汚れ ” が蓄積する外側に加え、
素手で常に触れている、内側にもケアは必須です。
手から出る汗がグローブの革に浸透し、その状態をほったらかすと、
汗が乾いた段階で革がカチカチに硬化するんですよね。
それを繰り返し続けて放置している内に、段々と革がヒビ割れてしまうわけです。
|汗を落とすために欠かせないアイテム
グローブケアにおいては ” ステインリムーバー ” が欠かせないです。
水性なので、皮革の中に浸透してしまった汗を浮かせて落とせますし、
激しいプレーの中でついた泥汚れにも相性が良いです。
全体を拭き終わったあとの、あのなんとも言えないサッパリ感が良いですよね。
以前、グローブケアの講習会を行いましたが、
そこでも参加した方々におすすめするくらい、私の中での必須アイテムです。
「Baseball Garage」 には詰め替え用を含め、最大サイズで常にストックを準備しています(笑)
|” 苦労 ” の先にあるもの
バットにしても、最初のモデルが完成するまでには5年かかりましたし、
グローブのリペアにしても、縫製の練習にはとても多くの時間が必要でした。
初めての作業というのは常に ” 苦労 ” の連続でしたし、難しかったなぁと、改めて感じますよ。
ただ、その中で納得のいくものができたときの心地よさには、格別のものがあるのも事実です。
そしてなにより「素敵なバットができました!」や、
「めちゃめちゃグローブがきれいになってる!」など、
お客様にお喜びいただけた瞬間には、一番のやりがいがあります。
うちを頼ってくれるお客様のために、これからも自問自答を繰り返していこうと思いますね。
インタビュー内容は以上です。
今回、藤本さんにはリモートでのインタビューにご協力いただきました。
パソコンの画面ごしでも笑顔が素敵で、接しやすいと同時にストイックなその人となりから、
遠方からでも会いにいきたくなる、数々のお客様の気持ちがわかりました。
そんな藤本さんが手掛ける木製バットブランド「B.C Works」から、
今冬、新たなモデルがリリースされるとのことです。
詳細が気になる方は、下記より実際に情報をご覧ください。
グローブのメンテナンスでお困りの方も、お気軽にご相談いただけますよ。
次回のインタビューもお楽しみに。
B.C Works| Baseball Garage
〒701-3202
岡山県備前市日生町寒河1183-1
TEL:0869-93-4664
・ホームページ:https://www.bc-works.jp/
・B.C Works ブログ:https://bcworks.exblog.jp/
・B.C Works Twitter:@BCWorks_Bats
・B.C Works Instagram:@baseball_creative_works
・Baseball Garage ブログ:https://fujimotosp.exblog.jp/
・Baseball Garage Twitter:@BaseballGarage
・Baseball Garage Instagram:@baseball.garage_shop
・Baseball Garage Instagram(野球グラブのリペア専門):@baseball.garage
|B.C Works 新商品情報
実打可能トレーニングバット(竹バット・ラミバット)
Edistaa Bats Series (エディスターバットシリーズ)
金属バットの感覚で使用しながら、木製バットの感覚を身に付ける事ができるトレーニングバット。
・販売時期:現在販売中
・価格:¥9,350~¥12,650(税込)
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