Meister interview vol.21 〜 LEATHER TOWN SOKA Project team 河合泉さん〜
2021年11月29日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。
今回はレザーの産地としても知られる埼玉県 草加市で、
「LEATHER TOWN SOKA Project team」の広報と商品企画に携わる、
河合 泉(かわい いずみ)さんにお話を伺いました。
LEATHER TOWN SOKA Project team 河合 泉
母の影響で、幼いころから洋裁、木彫り、レザークラフトに触れて育つ。
美術大学では陶芸を学び、卒業後はインテリア企画の仕事に携わる。
2004年、出産、育児を経て現職である河合産業株式会社に入社し、
経理事務を経て、2013年に「LEATHER TOWN SOKA Project team」に参画。
60年以上の歴史を持つ皮革の産地である埼玉県 草加市の草加レザー、
並びにその加工技術を広めるためにさまざまな取り組みに携わる中で、
革素材の可能性や奥深さに目覚める。
現在は草加レザーの広報、ブランディング、営業や商品開発など、幅広い業務を手掛ている。
|革が好きになった原体験
革の持つポテンシャル、奥深さに気がついたのは現職に就いてからですね。
しかし、それとは別に、自分自身が生活していく上で革の存在を意識し始めたのは、
母が当時習っていたレザークラフトがきっかけだと思います。
レザークラフトって、作る過程で音が大きく鳴っちゃうこともあるんですけど、
実家は長野県の田舎で、多少の音であれば、立てても良い作業環境だったので。
当時も積極的に色んなものを作ってくれて、
その中でもこのコインケース(上記画像)は、特に気に入っています。
いろいろな柄が組み合わさっていて飽きが来ないのと、丈夫なのとで、
子供の頃から現在まで、ずっと使い続けています。
|革という素材を知る中で感じたこと
革については、自然科学、化学、歴史、デザイン、工芸工業など、
広範な視点が必要で、興味が尽きることのない、知れば知るほど面白い素材だと思っています。
2013年に「LEATHER TOWN SOKA Project team」の仕事をはじめて以来、
「皮革の産地として、草加市で何ができるか」を皮革産業の方々と一緒に考えるようになりました。
専門的な知識はほぼ0の状態でのスタートでしたが、
革についての情報を知る中で、その素材の可能性や奥深さに気付かされましたね。
|草加レザーを使用した「HIKER」(ハイカー)の魅力
「LEATHER TOWN SOKA Project team」のブランドのひとつである
「HIKER」(ハイカー)の製品デザインは、
台東区蔵前にショップ&スタジオを構える「ALLOY」(アロイ)の方々とともに作り上げました。
丸みを持ち柔らかな印象が強く、温かい質感を持つ皮革、
角張っていて直線的な印象が強く、冷たい質感を持つ金属、
この2つを対比させ、革の丸み、素材の持つ柔らかみや温かみを際立たせました。
|製品を企画する際のこだわり
そのほか、「LEATHER TOWN SOKA Project team」の商品企画には、
草加レザーの消費を促進するため、2つの考えを軸として設定しました。
1つ目は他ブランドとの差別化です。
例えば、多くのお客様はお財布をすでに持っていて、その市場は飽和状態に近いと思います。
こんな状況でお財布を作ったとしても、草加レザーの消費には繋がりづらいと考えていて。
既にある革製品の市場から離れ、
革で作られているイメージのないものを敢えて革で作ることによって差別化を図りました。
2つ目は、デザイナーやクリエイターへのアピールです。
これは、 「LEATHER TOWN SOKA Project team」 のモノづくりを通じて
「革の持つ、素材としての可能性」を伝えることで、
モノづくりにおいて欠かせない素材の選択肢に「草加レザー」を加えてもらうのが目的です。
| 「LEATHER TOWN SOKA Project team」 のプロダクトが目指すもの
「LEATHER TOWN SOKA Project team」 の製品は、
「革を語れる」ものであってほしいと、常に考えています。
皮革の持つ質感、経年変化(エイジング)を楽しめるようにするため、
「HIKER」や「FITNESS LEATHER」製品のデザインは、
革同士の継ぎ、縫い目を極力減らしてシンプルな仕様にしています。
単に味が楽しめるだけでなく、縫い穴から革が裂けるリスクを減らせるなど、
シンプルなデザインにすることにはメリットも多いです。
しかし、すくなからずデメリットもあります。
製品にするためには、当然キズのない、きれいな革を選ばなければなりません。
ですが、天然のものである皮革には「トラ」「血筋」など、動物であった頃の痕跡も残っています。
ゆえに、見栄えの観点から省かざるを得ず、一枚の革あたりから実際に製品に使える部分はすくなくなってしまいます。
継ぎのすくない、シンプルなデザインであればあるほど、
革の選定もシビアになり、省かなければならない部分も増えてしまいます。
仕上げられ、完成した状態の「HIKER」製品を見た方には、
「製品が完成する前の工程」、「その中で省かれてしまった革のこと」
を想像し、我々がそれらについて語り、皮革をとりまく現状についても知ってもらえたらと考えています。
|唯一無二、天然の証
「トラ」や「血筋」は製品の見た目にシビアな方々からはエラーとされがちですが、
動物からとれる天然物にしか存在せず、同じものも存在しない唯一無二の模様でもあると感じます。
この唯一無二であるという点について、皮革が持つ「個性」として、
なにかポジティブな表現を見つけ、積極的に打ち出していきたいと考えています。
|「革が余ること」に対する活動
草加市内の各メーカーでは現在、余った革がただ廃棄されてしまうのを防ぐ目的で、
端材を詰め合わせにし、趣味でレザークラフトを楽しむ方に格安で提供しています。
大きさの都合で弊社製品に使えなくても、
革小物を作っているという方にとっては十分な大きさだったりするので、
積極的に利用してくださる方も増えています。
また、今年は新たに「Uターン レザープロジェクト」という仕組みも立ち上げました。
これは、全国各地でやむなく駆除されてしまった野生動物の「皮」を、
草加市の技術を用いて「革」の状態にし、さらには製品化して地元にお返しするという仕組みです。
こちらも依頼の件数は徐々に増えつつあり、
駆除されてしまった動物の皮が無駄になってしまうのを防ぐことができています。
|「革」の持つ魅力、パワー
革には、温かみのある質感や経年変化などの普遍的な魅力に加え、
「かつて生き物だったからこそのパワーが宿っている」と感じています。
「生き物の皮が無駄になってしまっている」という現状を解決するための仕組みを作りましたが、
次はそれを発展させ、このプロジェクトから生まれた革や製品を、世界で起こっているさまざまな問題に役立てたいです。
荒唐無稽かもしれませんが、革の持つパワーにはこれらを実現するだけの可能性を感じます。
|「革」を身近に感じ、カジュアルに楽しめるように
店舗内装の提案をしたり、デザイナーの方とやり取りを続けたりする中で、
「革には高級感だけでなく、落ち着きやリラックスを与える効果もある」と感じるようになりました。
椅子やソファ以外にも、間仕切り、タペストリーやティッシュボックスなど、
あまり革で作られてなかったアイテムに革を用いることで、
落ち着きやリラックスといった効果を吹き込んでいきたいです。
リモートワークの影響で、自宅で過ごす時間も増えています。
「HIKER」や「FITNESS LEATHER」のプロダクトを自宅での時間に使ってもらいながら、
革の存在をさらに身近に感じていただけたら嬉しいですね。
インタビュー内容は以上です。
ティッシュボックス、ワインボトルホルダーやダンベルなど
革のイメージがない、日常生活の中で使えるさまざまなアイテムを通じ、
製品の背景についても考えるきっかけを与えてくれる「LEATHER TOWN SOKA Project team」のプロダクト。
「製品を目でみて、触れてみたい」
「プロダクトを実際に体感したい」
という方は「FANS.新橋」にて行われるポップアップイベントに、ぜひ足を運んでみて下さい。
素材の風合い、デザインなどをはじめ、プロダクトの魅力を味わうことのできるイベントとなっています。
(下記よりイベントについての詳細をご覧いただけます。)
次回のインタビューもお楽しみに。
LEATHER TOWN SOKA Project team
埼玉県草加市中根1-14-1|河合産業㈱内
・TEL:048-936-2267
・FAX:048-936-2308
・ホームページ:http://soka-leather.jp
・HIKER Instagram:@hiker_soka
・FITNESS LEATHER Instagram:@fitness.leather
|POP UP in FANS.新橋
・日程:12/4(土)-12/19(日)
・場所:FANS.新橋|新橋駅 日比谷口 SL広場前 徒歩0分
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