【カスタムの奥義に迫る】ビルド担当鈴木悠馬氏インタビュー 前編
皆さまこんにちは。
銀座工房のはたのです。
本日は、10月27日(水)から開催する
「ワークスタイルコレクション」のリソール、ビルドを担当した鈴木悠馬氏のインタビュー記事前編を紹介します。
はじまりなんてそんなもん
羽田野:今ではどんなリペアも承るイメージがありますが、靴修理の出会い、きっかけってありますか?
悠馬:靴業界に入ったきっかけは21歳の頃に靴磨きのアルバイトをはじめたことです。
正直動機は「東京でしかできないような珍しい仕事がしたい」という軽い気持ちでした(笑)
ちょうどそのころ自己流で靴磨きをしてたので「プロのノウハウを学べて、さらにお金までもらえるなんて最高!」程度のノリで考えていました笑。
羽田野:結構軽い気持ちでスタートしたんですね(笑)しかも、磨きからとは意外です。
悠馬:そうなんですよ。はじめは、都内のホテルで楽しく磨いていたんですが、働き始めてわずか2か月後に親会社が倒産。靴磨き事業部も縮小せざるを得なくなりました。アルバイトは全員カットされたのですが、当時の上司が次の働き口として紹介してくれるとのことで一安心しました。そして、紹介されたのが提携先の靴修理業でした。と言っても、今話すと感動的ですが、半ば強引な流れで身柄を引き渡されたため当初は戸惑いを隠せませんでした(笑)
羽田野:すごい話(笑)でもそれがきっかけで靴修理に目覚める訳ですね。
悠馬:はい(笑)いざ靴修理業に身を置いてみると、磨きよりずっと自分に合っていて、その魅力にすっかりハマってしまいましたね。
ブーツへの目覚めときっかけ
羽田野:今はブーツのイメージがすっかり定着してますが、ブーツに興味を持ったきっかけみたいなのはありますか?
悠馬:靴にハマった当初は、短靴やドレスシューズが好きでした。修理屋に転向してからもしばらくはOX(内羽根)やダービー(外羽根)ばかり履いてました。でも修理屋って足元が意外とデンジャラスなんですよ(笑)。ド下手な新人時代はボンドやインクをこぼしちゃったり、釘を踏んづけたり。時にはクイックな仕事も求められるんで、つい什器にひっかけてアッパー傷つけたり。
羽田野:確かに、新人時代かっこよく修理してやる、磨きしてやるって意気込むんですけど、結局ブルーワーカーに近いですよね。僕もガンガンぶつけてへこんだ思い出があります。
悠馬:そうなんですよね。今となってはまったく気にならなくなりましたが、当時の自分にはそれがちょっぴり嫌で。でも、ブーツなら傷ついても様になるし、むしろボロボロに履き倒してる方が雰囲気あってかっこいい。デイリーに使える安心感とか、タフネスな魅力を感じて、ブーツのポテンシャルに気づきましたね。そこからどんどんブーツに憑りつかれていきました。
ブーツの歴史背景を愛する
羽田野:ブーツって傷ついて、ボロボロになることが正しい訳じゃないですけど、求めちゃうところありますよね。ブーツのこだわりみたいなのってありますか?
悠馬:ブーツって旧時代的な匂いがするんですよね、なんとなく。重くてかさばるけど頑丈でへこたれない。使い手のガムシャラさをしっかり受け止めてくれる懐の深さがあります。しかも使い手の履き込み方次第で表情がみるみるかわっていくので、エイジングを観察するのも楽しいポイントのひとつと言えます。
羽田野:確かに、懐は深いですね。同じモデルでも履き主、環境によって全然違う表情に変化してくれます。
悠馬:そうなんですよね。さっき、ドレスシューズからブーツへ興味がうつっていったとお話ししましたが、そもそもブーツへの漠然とした憧憬(あこがれ)自体は昔からありました。子供のころ繰り返しみてたディズニー映画の影響が大きいです。時代や舞台の設定は作品によってバラバラですけど、基本的には西洋の古典が題材だから、たくさんのブーツが出てくるんですよ。それが妙にかっこよくて。当時はもちろん知りませんでしたが、昔の革靴ってブーツ丈がデフォルトで今の短靴が主流になるのは20世紀に入ってからなんです。「道なき道を冒険し、困難を乗り越えるにはブーツが必要なんだ」と、幼少期から刷り込まれたのかもしれません(笑)
羽田野:デフォルトはブーツというのは知らなかったです。僕もテキサス映画などで室内の情景の時、さりげなく、替えのブーツがちらっと写ったりすると今はテンション上がますよね。昔は「何でベッドの下にもう一足?」なんて思っていましたが、今見ると「そうそう、履き替えないとね」って(笑)小さな部分での思い出が、思った以上に自分に影響を与えることがあるのかもしれないですね。
後半に続く…
ソールカスタムについて詳しくは↓↓↓
FANS.浅草本店 リペア部門 鈴木悠馬氏。
定番のカカト修理やつま先補強なども難なくこなすが、
悠馬氏の強みは、修理対応の応力と歴史背景を踏まえた靴事情を周知していること。
その中でも敬愛するものがワークブーツ。
長く履き続け、足を守るという使命を持つワークブーツは、
破損箇所も多数あり、困難な修理に直面する機会も、手間もかかる。
悠馬氏は、ただ修理するだけ、ただ履き主の要望に応えるだけでなく、
履くシーンや、日頃のスタイルをヒヤリングしリソールを行う。
見た目だけでなく、内部にもこだわり、
シャンクを仕込む時も腐食しにくくなるよう、
テーピングをおこなうなど芸が細かい。
そんな丁寧な仕事が多くのブーツ愛好家の心に響いている。
後編はこちら↓↓↓
【カスタムの奥義に迫る】ビルド担当鈴木悠馬氏インタビュー 後編
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