Meister interview vol.20 〜 RENDO 吉見鉄平さん〜
2021年08月03日
革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通している
プロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAYのシューケアマイスターがインタビュー。
お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介していく企画です。
今回は vol.17の対談インタビューにて登場していただいた、
靴ブランド「RENDO(レンド)」の吉見鉄平さんに、
ブランド、靴を作ることについてや、日頃お手入れで使用しているアイテムについてお話を伺いました。
RENDO 吉見鉄平さん
大学在学中に留学先のイギリス、ロンドンの靴学校で靴作りの基礎を学び、
帰国後は浅草の靴学校にてその知識をさらに深める。
卒業後の2002年、浅草の紳士靴メーカーにて、
デザインを元に型紙を起こし、革を裁断するパタンナーとして活動。
国内外問わずさまざまなブランドの靴作りに携わる。
11年後の2013年、自身の靴ブランド「RENDO」の創立と同時に、
浅草にアトリエ兼ショップを立ち上げ。
靴職人として木型の設計、デザインや皮革の裁断を行うだけでなく、
お客様の履き心地を重要視し、自身がフィッティングを担当する。
そんなお客様の足と靴との関係への姿勢、
生み出された靴の確かなクオリティ、
そしてその人となりが、全国の革靴ファンから支持を集めている。
|2002年に就いた「靴作り」という仕事に抱いていた思い
最初の仕事ではパタンナーとして靴の型紙を作り、
革の裁断をする仕事をしていました。
はじめは、
「パターンさえ良ければ靴がすべて良くなる」
「パターンが靴のクオリティの大部分をコントロールする」
なんて思いが強くて。
当時、靴作りの別の現場を見学していても、
パタンナーの方の力が強いなんてことは往々にしてありました。
|現場に入り、他工程の職人と共に靴を作る中で気づいたこと
実際に現場で働いていると、パタンナーとしての仕事は、
「他の工程と並列の靴作りに必要な工程のひとつ」だと気が付きました。
もちろんパターンがしっかりしていないと
靴のクオリティが下がってしまうというのはあります。
しかし、他の職人さんと関わる中で、
革と革を縫い合わせたり、ソールを付けたり、
これらの工程はパタンナーの仕事同様、いずれも靴作りには欠かせない要素で、
そこに優劣や強さ、弱さのようなものはない、並列の関係なんだと思うようになりました。
|他工程の職人と仕事をする中で感じた「パタンナー」の魅力
パタンナーの仕事の面白みっていうのは、「問題解決」にあると思ってます。
「靴として本来こうあるべき」という設計があっても、
「こうあるべき」に合わせすぎたことによって、
今度は「効率的に革を裁断しにくくなってしまう」というジレンマが起きます。
パターンを含む、靴作りのさまざまな工程を俯瞰で見て、
各工程からの声を汲み取りながら、落とし所を探し、
兼ね合いやバランスを調整し、課題をクリアしていくのが楽しいのかなと。
|2013年、自身のブランド「RENDO」を立ち上げてから変わったこと
「お客様の足を触って、その上で靴を作る」ことですかね。
ブランドを始める前は、正直言うと、
頭でっかちになっていた部分がありました。
当時の自分は「靴として美しいもの」が作れればOKって感じで、
「靴作り」が作業台の上で完結してしまっていました。
接客したり、販売したりする機会も無く、
職人として靴を作るのみだったので、
「靴を履くお客様」のことは考えていなかったんですね。
だから、「RENDO」というブランドを立ち上げ、
自分自身で、靴を履くお客様と直接やりとりをするようになってから、
「履物」としての靴を作り始められるようになったと思います。
|吉見さんが考える「RENDO」らしさ
うち(=RENDO)だけじゃないですけど、
「アトリエが併設された店舗を持っている」
というのは大きいでしょうね。
スタッフは僕以外に2人居るんですけど、
それぞれに「学校で靴作りを学んできた」という経験があります。
「RENDO」のお店では僕を含め、常に職人が接客して、
その中で出てきた情報をお互いに共有して、
併設されたアトリエの中で作業に落とし込めるわけです。
靴作りの1から10までが店舗で終わるわけではないですが、
ひとつの場所の中で改善点の共有から実行までを完結できるというのは、
らしさというか、強みなんじゃないかなと思います。
|お客様との対話、その中での改善を続ける中で感じること
正直、木型の調整はかなり難しいなぁと感じています。
会社の規模感にもよると思いますが、
足の形をデータとしてたくさん集めて、全てを反映しようとすると、
どうしても木型が保守的になってしまって。
「ある程度履ける」「履けなくはない」という方は増えますが、
「この靴は抜群に合う」という体験が少なくなります。
なので、うち(=RENDO)は、スタッフ数やお店の規模を考えて、
「合う方にはとことん合う」という部分を突き詰めて、
「気に入って何足もリピートして頂く」というスタイルを保っています。
|「RENDO」を愛用するお客様の層
20代~40代前半の方が多いです。
もともと、創業当時はお客様の年齢に関係なく、
足のデータをとにかく集めて、それを木型に反映させていました。
それがどうやら現在30、40代の、
当時20、30代の方々に相性の良い木型だったみたいで。
|足の形は世代ごとに異なる
意外と、足って10年単位くらいで世代ごとに形が違っていて。
例えば、「日本人は甲高幅広」なんて言われがちです。
けど、今の若い世代(=10代、20代)の方々の足を、
直接見てみると、ぜんぜんそんなことはないなと感じます。
あくまでうちに来てくださるお客様を見てきた中で、ではありますが。
そこで20代の方に合うような木型を設計し、靴を販売し始めたところ、
「足に合う」と、それまではご利用が少なかった、
若い世代のお客様にも来店してもらえるようになりました。
|「RENDO」で人気がある靴のモデル
世代ごとに足の形が変わり、それが木型に反映されるように、
世相によって人気モデルが移り変わることもあります。
外出の機会が減り、それに伴って靴を履く機会もすくなくなったことで、
紐を使わず、楽に脱ぎ履きできる「スリッポン」や「ローファー」の需要が高まってきています。
その分、目に見えて減ったわけではないですが、
スーツを着なくなったり、カジュアル化が進んだり、
結婚式や成人式がなくなったりという影響から、
フォーマルなモデルは出ることが少なくなってきています。
|パターンオーダーの魅力
オーソドックスなものもまだまだ人気がありますが、
昔から比べると、さまざまな色、素材の組み合わせで
パターンオーダーをする方が増えたなと感じます。
リピートしてくださる方が「すでに普通のモデルを持っている」という点に加えて、
「自分だけの組み合わせで、ひとつ良いものをオーダーして履きたい」なんて方が増えたのかなと。
また、「革の裁断パターンやデザイン自体を変更したい」と、
「元あるパターンの中から組み合わせを選ぶ」という、
パターンオーダーのひとつ先を希望するお客様も増えてきています。
「靴が好きな方」、「良いものを履きたい」という方々のこだわりが加速していますね。
|吉見さんご自身が気に入っている「RENDO」の一足
これ(=インタビュー時に履いていた靴)、結構長いですね。
かれこれもう6年くらい、お手入れしながら履いてます。
接客のタイミングで、しゃがむとどうしてもつま先が地面につくので、
片方は先端擦れたりしてますけど。
|「お手入れ」のこだわり
「鏡面磨き」だったり、特別なこだわりってのはないですね。
最低限クリームを塗って、ブラッシングするくらいなもので。
一番気をつけてるのはシュートリー(=シューキーパー)ですかね。
普段履く靴って6足くらいあるんですけど、それらには全部入れてます。
|革靴を履き、作り続ける中で感じること
どうしても「革靴を履かなくなった」、
「欲しかったけどコロナの影響で履く機会がすくなくなった」というお声を頂くことが増えました。
「なんとかしなければならない」、
「なにか提案できることがあればしたい」と思っています。
そんな中で、半分お遊びみたいなものではありますが、
これまでの革靴とはアプローチを変えて、スリッパのように履ける靴のモデルも作りました。
コンビニ行くとき、すこし買い物をするときの履物というか。
|変わりつつある靴作りのやり方
これは木型を使わずに作ることができます。
従来の靴とは違い、縫製や底付けなどは当然必要ですが、
自分が得意とする分野のパターンで、靴作りの多くの部分を進められます。
「木型の形、人気のモデルが世代や世相で変わる」という話はしましたが、
それだけでなく、長く続いてきた「靴の作り方」自体も、
すこしずつではありますが、変わってきているのかなと思います。
インタビュー内容は以上です。
靴作りの現場のみならず、
お客様自身の足と靴との関係をより良いものにするため、
浅草の店舗・アトリエ内でスタッフの方々と改善を続ける吉見さん。
対話の中で進化し続ける「RENDO」の靴には、
「お手入れして、履いて、育てたい」と感じさせられる、
そんな魅力がたくさん詰まっていました。
「自宅の近くでRENDOを履き、体験したい」
「記事で興味を持ったけど、浅草はすこし遠くて…」
という方は下記、「RENDO」さん公式のSNSをフォローすることで、
イベント情報を見逃すことなくチェックできます。
新しい靴についてのことをはじめ、さまざまな情報も見ることができますよ。
8/5(木)~8(日)には、大阪にてオーダー会を開催するそうです。
関西の方はぜひ、足を運んでみてください。
(イベント詳細は下記よりご覧いただけます。)
次回のインタビューもお楽しみに。
RENDO
東京都台東区浅草7-5-5
銀座線浅草駅 / 7番出口から南千住方面に徒歩13分
営業時間:13:00~19:00
定休日:毎週火・水曜日
電話番号:03-6802-3825
・オンラインストア:https://www.rendo-shoes.jp/
・Instagram:@rendoasakusa
・Twitter:@rendoshoes
・Facebook:@rendoshoes
|RENDO TRUNK SHOW 2021
・日程:8/5(木)~8(日)
・場所:SAA |〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-16-32 E-BUILDING 1F
・詳細:https://www.facebook.com/rendoshoes/posts/3964214706959692
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