靴磨きは難しくなった?
こんにちは。二子玉川工房の寺田です。
「靴磨きって難しそうで…」
私の肌感覚ではあるのですが、お客様から耳にする機会が増えている声です。
この仕事を始めた12年前にはそこまで聞かなかったはずです。
なぜ、靴磨き、シューケアを難しいと感じる人が増えているのか?
この疑問について考えてみました。
靴の磨き方は変わっていない
靴磨き、シューケアの作業そのものが、数年間で難しくなったわけではありません。
・ブラシでホコリを落とす
・クリーナーで汚れを落とす
・靴クリームを塗る
・ブラシでツヤを出す
・乾拭きで仕上げる
人によって使う道具、流れに多少の違いはあっても、靴磨きの基本はおおよそこの通りです。
約10年間で、多少変化があったとすれば、「液体クリーナーでの汚れ落とし」が靴磨きの主流になったことでしょうか。
水性汚れ落としのM.MOWBRAY ステインリムーバーを使った、革靴のコンディションに重きを置いた靴磨き、シューケアを提案してきた弊社としては、嬉しいことです。
少し話が逸れてしまいました。
靴の磨き方が変化していないのであれば、何が変化し、靴磨きを難しくしているのでしょうか?
それは、靴磨きの「道具の数」「情報量」だと考えています。
靴磨きの道具の数
靴磨きで使う道具の数は、少しずつ増えています。
弊社の「黒の靴クリーム」に限定しても、私が入社した2009年には4種類だったものが、2021年現在は6種類に増えています。(廃盤になったものもあります)
それぞれのアイテムの隙間を埋め、靴を磨く人々の要望に応えていった結果ではありますが、一方で「多くの選択肢から選ぶ難しさ」を生んでしまったとも言えます。
靴磨きの情報量
私たちがかつて使っていたブログサービスなどは、多くが2004年頃に始まっています。
情報の発信が、誰でも手軽にできるようになった時代です。
その後、現在の主流となっている各種SNSの日本語版がスタートしました。
2008年 Facebook , Twitter
2014年 Instagram
私たちは、シューケアマイスターの業態がスタートした2009年から、これらのツールを使って情報を発信し続けてきました。
ブログのように日々の記事が積み重なっていけば、ウェブ上の靴磨きの情報量はどんどん増えていきます。
難しさの正体
靴磨きの道具と情報が増える流れが、いくつかの店舗、いくつかの会社から広がっていったとすれば。
さらに、個人で靴を磨く方からも広がっていったとすれば。
この状況が、「靴磨きが難しい」の正体なのだと思います。
「靴磨きが難しい」は、本当は「あらゆる靴磨きの選択肢から選ぶことが難しい」なのではないでしょうか。
私たちがこれからすべきことは、適切なモノと情報を、ミスマッチを起こさないよう、必要としている人に手渡すこと。
靴磨きの道具も、情報も、元々は「良いもの、役立つもの」と世に出してきたものです。
選択の幅を難しさではなく、靴を磨く人たちの豊かさにつなげられるように。
店頭で、ウェブで、SNSで、活動を続けていきたいと思います。